研究課題/領域番号 |
25420179
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
白石 俊彦 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 准教授 (30361877)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 機械力学・制御 / 細胞 / 骨 / 振動学 / 振動モード / 固有振動数 / モデル化 / 力学センサ |
研究実績の概要 |
本研究では,細胞を大規模構造システムとして捉え,機械的振動に対する細胞の振動モードをミクロンオーダで測定するとともに,細胞の固有振動数を求めることを目的とする.さらに,振動モードに対応した細胞内の局所的な変形と生化学反応との対応関係を明らかにし,力学-生化学変換機構としての機械的振動に対する細胞の力学刺激感受システムを検討する.この目的達成のために,当該年度では,生きた細胞を使って,細胞の振動モードの測定,および細胞内の局所的な変形と生化学反応との対応関係の測定を行った.まず,マウス骨芽細胞様細胞株MC3T3-E1において,細胞骨格の一種のアクチンフィラメントおよび細胞核を発光させ,蛍光顕微鏡ステージ上で圧電素子を用いて加振し,細胞の振動モードの測定を行った.その結果,特徴点抽出・追跡アルゴリズムであるKanade-Lucas-Tomasi法により,生きた細胞において50Hzまでは細胞内各部の変位が測定可能であることを示した.現状では,アクチンフィラメントおよび細胞核において明確な振動モードが確認されなかったので,加振振幅を大きくする,細胞内各部の応答変位だけでなく加振変位に対する位相差も測定する,他の細胞内小器官を発光させるなどを行うことを検討する.次に,細胞の振動モードを考慮して加振時に細胞内で大きく変形すると推察される部分に磁性粒子を付着させ,それにマイクロピペットを用いて微小な変形を与え,細胞内の局所的な変形と生化学反応との対応関係の測定を行った.変形についてはアクチンフィラメントの変形,生化学反応についてはカルシウムイオンの濃度に注目した.その結果,10μm程度以内の微小変形では,アクチンフィラメントの局所的な変形とカルシウムイオン濃度の変化率との間に線形的な単調増加関係があることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に計画していた,生きた細胞における振動モード測定実験,細胞内の局所的な変形と生化学反応との基本的な関係の取得が達成できたため.さらに,次年度に予定していた振動数50Hzでの実験の一部を実施できたため.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画どおり,先行研究で骨芽細胞による骨形成が最も促進される加振振動数50Hzを含む広い振動数域において,細胞の振動モード,カルシウムイオン濃度の分布などを測定し,どのような対応関係があるかを検討する.
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