研究課題
本研究は,ランダムな伝送遅れを伴うインターネットやLANなどの通信路を介した遠隔操作系構築が目的である.伝送遅れの分布が対数正規分となると仮定し,その影響が直接出るマスター側およびスレーブ側の観測データにおけるランダム遅れ項をテーラー展開により加法的観測雑音項として書き換える手法を本研究テーマにおいて開発した.さらに,対数正規分布を持つランダム遅れの平均遅れ時間とその平均遅れ時間周りの対数正規分布に分けて通信路とシステムのモデル表記を導入し,ランダム遅れ時間過程をテーラー展開して加法的観測雑音に書き換える手法を適用することで,平均遅れ時間周りで展開することが可能となった.平成27年度は,この手法をバイラテラル制御系の観測システムとして用い,マスターシステムから送られた指令信号がスレーブ側に到達したときに,ランダムな伝送遅れによる信号の乱れが顕在化することから,導入したランダム遅れ時間項を加法的な観測雑音項として書き換えたものに基づき状態推定器を設計した.スレーブ側から送られたスレーブシステムの状態情報がランダム伝送遅れにより乱されるため,同じ考え方で設計された状態推定器によりランダム伝送遅れの影響を最小化するようにしてスレーブシステムの状態推定値を得る.これにより,ランダムな伝送遅れを伴う通信路を介してバイラテラル制御系が構成できる.状態推定器としては,カルマンフィルタ,拡張カルマンフィルタおよびUnscented カルマフィルタが使用できることが既に平成26年度の研究成果として明らかとなっている.バイラテラル制御系に搭載する状態推定器として,ランダムな伝送遅れ系の雑音処理に有効であり設計法も明確になっているカルマンフィルタを適用し,1リンク柔軟アームに対し本手法の有効性を確認し,ランダムな伝送遅れを伴う通信路を介してもバイラテラル制御ができることを確認した.
すべて 2015
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Proceedings of the 47th ISCIE International Symposium on Stochastic Systems Theory and Its Applications Honolulu
巻: 1 ページ: pp.88-95