研究課題/領域番号 |
25420185
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
長瀬 賢二 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (70303667)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | テンセグリティ / 構造設計 / 最適化 |
研究実績の概要 |
本研究では,テンセグリティ構造体の系統的かつ大域的な(統一的な)最適構造設計のための解析・設計理論の確立を目指し,特に,自由曲面形成のための汎用基本ユニットの開発,ならびに,最適構造決定のための可変構造モデルに基づくシステム解析・設計法について検討している. 本年度,自由曲面形成のための汎用基本ユニットの開発に関しては,昨年度基本的な性質の検討を行った,円柱型テンセグリティの結合パターンを規範としたテンセグリティシートに対し,任意の要素数や任意の形状(曲率など)を指定可能な計算アルゴリズムの導出を行った.また,それらの計算アルゴリズムを用いた数値解析により,多くの凸曲面において,生成されるテンセグリティ構造が安定となることを確認した.安定解析を行う中で,これらの構造体は,シートを曲面状に曲げる際に現れる面外要素(棒)により安定性が保たれており,曲率が小さくなるにつれて面外要素の働きが小さくなるとの知見を得た. また,可変構造モデルに基づく解析・設計法の開発に関しては,昨年度検討を行った,要素位置と結合関係の情報を異なる行列の要素内に配置した,分離表現と呼ばれる数学表現において,力の釣り合い条件やシステムの剛性行列の導出を行った.またそれを利用した最適設計法として,力の釣り合いや最大応力などを制約条件とした,質量最小化問題の定式化を行った.最適化問題は,半正定値計画問題(凸問題)として記述でき,内点法などの最適化アルゴリズムを用いて数値的に安定に最適解を求めることができる.また,上記分離表現を用い,剛体体結合を含むテンセグリティ構造の,統一的な動力学モデルの導出も行った. また,製作が容易なテンセグリティ構造体の検討という観点から,それ自体が安定なプリズム型のテンセグリティを基本要素とした板状構造物を考え,その設計と製作を行い,特徴や問題点等について検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,テンセグリティ構造体の系統的かつ大域的な最適構造設計のための,汎用基本ユニットの開発,ならびに,最適構造決定のための可変構造モデルに基づくシステム解析・設計法の検討を行っている.本年度は,主に,円柱型テンセグリティの結合関係を規範とした基本要素(テンセグリティシート)において,任意の要素数や任意の形状(曲率など)を指定可能な計算アルゴリズムの導出を行った.また,可変構造モデルにおいては,分離表現と呼ばれるモデル表現を用い,質量最小化問題の定式化(静力学解析),ならびに,動力学モデルの導出を行い,その有用性や有効性を確認することができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の展開として,自由曲面形成のための汎用基本ユニットの開発に関しては,本年度検討を行ったテンセグリティシートに加えて,安定性や製作の容易さなどに優位性がみられるテンセグリティプリズムを基本ユニットとした構造物の生成方法についても検討する.要素数や結合関係などを変化させた場合の特性を調べ,必要に応じて部材の削除・追加等,基本ユニットの構成要素の変更・改良を行う. また,最適構造決定のための可変構造モデルに基づく解析・設計法の開発に関しては,本年度検討を行った可変構造モデルを用いた設計問題をより一般化し,座屈の制約や複数方向の外力を想定した場合の最小質量設計などについて考える.また,部材の太さと部材の位置を同時に最適化する,同時最適化問題についても検討する. また,テンセグリティ構造体の実用化の観点から,設計・製作面での課題等の検討を引き続き行うともに,ロボット等への応用の可能性についても引き続き検討する.
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