研究課題/領域番号 |
25420186
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
有井 士郎 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80222751)
|
研究分担者 |
長谷川 賢作 鳥取大学, 医学部, 講師 (60252847)
片岡 英幸 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (00224436)
北野 博也 鳥取大学, 医学部, 教授 (20153108)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 機械力学・制御 / 生物・生体工学 / シミュレーション工学 |
研究概要 |
本研究の目的は,1.鼓膜張筋と耳小骨筋の機械的性質の変化を考慮した鼓膜と耳小骨の振動モデルの構築とこれを用いた音圧加振時の鼓膜振動応答のシミュレーション,2.実験により得られた鼓膜振動応答の計測結果との比較による振動モデルの信頼性の検証と耳小骨の振動特性の推定,3.得られたモデルを用いた鼓膜から脳への伝音特性の解明とこれを用いた耳小骨離断や可動性低下などの難聴治療法の改善方法の検討,である. 本年度は,主に上記1,2を実施した.振動モデル構築のための音圧加振に対するヒトの鼓膜振動応答の計測は,今年度2人の被験者に協力をいただき実施した.昨年度までに実施した振動計測結果とあわせて,鼓膜の音圧加振時の振動応答はかなり明確に説明できるようになってきた.耳小骨の振動モデルの構築と音圧加振時の鼓膜振動応答のシミュレーションは,耳小骨の形状を簡略化したモデルで実施した.この結果,耳小骨と筋が接続する位置と角度,耳小骨間の相対位置関係が応答に大きく影響することが明らかとなり,モデル化には耳小骨の正確な3次元形状が必要であることが明確となった.このため,被験者のCT画像より耳小骨の正確な3次元形状を3Dプリンタで再現し,これを用いた耳小骨のモデル化を進めている. 今後は,この正確な耳小骨モデルによる振動モデルの信頼性を検証し,耳小骨の振動特性を推定して振動伝達特性を求め,鼓膜から脳への伝音特性の解明とこれを用いた耳小骨離断や可動性低下などの難聴治療法の改善方法の検討につなげていく予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度および来年度においては,鼓膜と耳小骨の振動モデルの構築,および,実験で得られた鼓膜振動の計測結果との比較による振動モデルの信頼性の検証と耳小骨の振動特性の推定を実施する計画であった. 鼓膜に関しては,今年度の研究結果で音圧加振時の振動応答はかなり明確に説明できるようになってきている.耳小骨の振動モデルに関しては,耳小骨と筋が接続する位置と角度,耳小骨間の相対位置関係が応答に大きく影響することが明らかとなった.振動モデルの信頼性向上には被験者のCT画像より耳小骨の正確な3次元形状の計測が必要であることが明確となり,来年度はこれを用いた耳小骨のモデル化を進めることで耳小骨の振動特性を推定できると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,引き続き鼓膜振動応答の計測を実施するとともに,鼓膜および耳小骨筋の機械的性質の同定を行い,鼓膜張筋と耳小骨筋の機械的性質の変化を考慮した鼓膜と耳小骨の振動モデルの構築とこれを用いた音圧加振時の鼓膜振動応答のシミュレーションを実施する.さらに,実験から得られた鼓膜振動計測結果との比較による振動モデルの信頼性の検証と耳小骨の振動特性の推定を実施する. 平成27年度は,得られた振動モデルを用いて,鼓膜への音圧入力が蝸牛に伝達されるメカニズムを明らかにし,伝達効率と周波数特性を解析するとともに,中耳疾患が伝達効率と周波数特性に及ぼす影響を検討し,治療法の改善を目指す.
|
次年度の研究費の使用計画 |
耳小骨振動モデル作成のためのCT画像撮影と撮影画像からの耳小骨の3次元形状計測,および計測結果からの3次元モデル作成が必要となったが,納品先との調整の結果年度内に作業が完了せず納品が次年度になったため,次年度に執行することになった. 次年度に繰り越した予算で上記の耳小骨3次元モデルを作成する予定である.
|