研究課題/領域番号 |
25420187
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
池田 隆 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50115523)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 機械力学・制御 / ジャイロスコープ / 浮体式洋上発電風車 / 制振 / 回転体の振動 |
研究実績の概要 |
本研究では,波浪による浮体式洋上風力発電風車の振動を抑えるため,ジャイロスコープ(以下,ジャイロと呼ぶ)を利用し,その制振性能について調べた.まず,ジャイロを浮体の水平軸回りに回転するように設置したモデルを考える.直方体の浮体が鉛直方向と傾き方向に波による正弦励振を受ける場合,主に浮体のローリング方向に対するジャイロの制振性能を検討する.このモデルの運動方程式を導き,ジャイロの回転速度に対する系の固有振動数を求めた.次に,van der Polの方法を用いて共振曲線を解析的に求め,スイープ励振を用いた数値シミュレーション結果と比較することにより,ジャイロの回転速度,ジャイロの質量,ジャイロの形状よる影響,およびジャイロの重心と浮体構造物の重心間の距離の影響を調べ,ジャイロによる浮体構造物の制振効果について検討した結果,次の成果を得た. 1. 浮体のローリングに対する固有振動数は,ジャイロ作用を受け,ジャイロの回転速度の増加とともに,増減する.一方,浮体のヒービングとヨーイングに対する固有振動数は,ジャイロの回転速度に依存せず,一定である. 2. ジャイロの回転により,浮体のローリングとヨーイングに対する共振曲線には二つのピークが現れる.ジャイロの回転数が高くなるにつれて,共振曲線における浮体のローリングとヨーイングの振幅のピークが波浪の高周波側に移るため,共振曲線の右側のピークの大きさが低減される. 3. 浮体のローリングに対するジャイロの制振効果を十分に得るには,ジャイロの質量を系全体の10%程度にする必要がある. 4. 極慣性モーメントが大きいほど,共振曲線の右側のピーク位置はより高周波側へ移動し,ローリングのピークの大きさも低減される.また, 浮体の重心とジャイロの重心との距離が遠いほど,共振曲線の右側のピーク位置は低周波側へ移動し,ピークを低減することができる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
浮体のみがジャイロを内蔵しない場合と内蔵する場合,および浮体式洋上風車がジャイロを内蔵しない場合と内蔵する場合の4つの系についてのモデリングは完成し,それぞれのモデルについて数値計算により,浮体が波浪を受ける場合の応答計算を行い,概ね計画通りに進展している.数値計算結果の妥当性を検証するため,実験装置の製作を予定しているが,簡易的な水槽を製作し,浮体に取り付けられたジャイロの制振性能を調べた.しかし,ジャイロの最大回転数が2000rpmであり,回転数不足のため,期待通りの制振効果を得ることができなかった.また,風車が取り付けられた浮体式洋上風車の実験装置はまだ完成していない.
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今後の研究の推進方策 |
実験装置において,波浪の生成は手動で行っていたが,加振機ヘッドからじゃま板を介して波の発生装置を製作する予定である.数値計算では,ジャイロによる浮体式洋上風車の制振性能を継続して調べており,一定の制振効果を確認しているので,これに伴う研究計画の変更はない.
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次年度使用額が生じた理由 |
洋上浮体の振動を把握するためには,浮体のx,y,z方向の並進運動に加え,3方向の傾き運動の合計6自由度の振動計測が必要である.特に,傾き運動の計測装置として,一般に角加速度を計測するセンサーが市販されているが,角速度データから角度データに変換する際に積分処理を行うことが必要であるが,購入予定のセンサーのデモ機を借用して積分処理を行ったが,十分な精度の結果を得ることができなかった.その結果,平成26年度に購入予定であった振動計測センサーを購入することができず,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
所望の精度を有する振動計測センサーを調査中である.候補のセンサーとして,追坂電子機器LP-WS0943のデモ機を借用し,その計測性能を調べる計画である.また,付随の振動処理解析ソフトウェアの購入も検討している.
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