平成27年度は,時変制約を用いて外乱オブザーバ出力を考慮して制御入力を算出する制約付き多変数モデル予測制御(MPC)手法を実機の制御に適用し,従来の制御手法と比較することにより,その有効性を検討した.また,外乱オブザーバ併用型予測関数制御(PFC)に零位相誤差追従コントローラ(ZPETC)を組み合わせる2自由度制御手法を実機の制御に適用し,通常の外乱オブザーバ併用型PFC制御との比較をおこなった.
制約付き多変数MPCの評価ではまず,2リンク平面マニピュレータを用い,各関節にステップ状目標値を与える場合や,手先軌道を直線状に移動させる場合の追従性や安定性を評価した.開発手法を,外乱オブザーバを用いないMPC,外乱オブザーバ出力を考慮せずに制御入力を算出するMPC,制御入力を飽和関数要素で制限する場合などと比較した.開発手法を用いると,外乱の高速な除去と制御入力に対する制約の満足を達成し,良好な目標値追従結果が得られた.一方,外乱オブザーバを用いない場合には,遠心力やコリオリ力,摩擦の影響を補償することができず,追従性が劣化した.また,外乱オブザーバ出力を考慮しないMPCでは,総制御入力がハードウェア制限値を超えてしまい,系が不安定化する結果となった.飽和関数要素で制御入力を制限した場合にはワインドアップ現象が生じ,終点位置からずれて整定する結果となった.
また,外乱オブザーバ併用型PFCにZPETCを併用する制御手法を1軸テーブル駆動系の位置制御に適用し,位置決め制度を評価した.ZPETCを用いない外乱オブザーバ併用型PFCに比べ,ZPETCを用いる外乱オブザーバ併用型PFCの場合には,位置決め誤差が1/18.3まで減少させることができた.
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