近年,環境問題への関心の高まりを背景に,機械システムの設計において高効率・高性能・低コストに加えて,低騒音性がその価値を決定づける要因の一つになってきている.その中でも,構造を透過する騒音の抑制,すなわち,遮音制御は主要な研究課題の一つであり,これまでに様々な観点から研究が行われている.本研究課題においては,スマートフィルムによって校正された多重壁構造にモードの局在化現象を積極的に惹起させることによって,特に壁を透過しやすい低周波音を,ある中間層にトラッピングさせ,結果として放射音を劇的に抑制する手法の提案を目的としている.今年度は,能動振動制御に比べて能動騒音制御が非常に高い制御効果を有する点に着目し,その点を中心に,以下の項目について検討を行った. (1)制御音源位置と制御効果の関係性について 中間層に設置する制御音源の数を1に限定し,その位置と制御効果の関係性について検討を行った.その結果,制御平面内(騒音エネルギの伝播方向に対して垂直になる平面)で制御音源の位置を移動しても,制御効果に大きな変化が現われないことが明らかになった.一方で,制御音源を騒音エネルギの伝播方向に移動した場合,上流側(外乱側)に設置した方が高い制御効果となることが明らかになった. (2)固有値問題の再定式化 以前に連成系の固有値問題を定式化したが,空間の固有関数を表す固有ベクトルの音場成分が純虚数となってしまう問題があった.絶対値で考えれば妥当な結果ではあるが,「形状」を表す関数が純虚数で計算されることは,厳密には正しくない.これを解決するために,伝達マトリクス法における状態ベクトルの要素のうち,音圧を速度ポテンシャルに変更した.その結果,固有ベクトルの振動場成分・音場成分ともに,計算結果が実数になった.
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