研究課題/領域番号 |
25420193
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
大浦 靖典 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (60512770)
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研究分担者 |
栗田 裕 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (70275171)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 材料試験 / 摩擦係数 / ディスクブレーキ / ブレーキパッド / 加振試験 |
研究概要 |
制動性能と鳴きにくさを両立したブレーキパッドを開発するための基礎技術を提案する。これまでにパッドを微小振幅で加振したときの剛性が、一定圧を加えたときの剛性よりも大きいことが明らかになっている。この剛性の違いは、制動時の摩擦係数にも影響している可能性がある。定常的な摩擦すべり状態におけるパッドの材料特性だけではなく、加振時のパッドの材料特性を測定する必要がある。 本年度はしゅう動状態のパッドをディスク面外方向に加振したときの剛性と摩擦係数を測定できる試験装置を開発した。実機で生じる鳴き振動は、制動圧によって発生の有無や周波数、振幅が異なる。この装置では、一定速度で回転するディスクに一定圧で押し付けたパッド試験片を面外方向に正弦波加振することで鳴き発生時に近い状態とし、面外方向の加振力と変位および面内方向に生じる摩擦力を測定できる。パッドの材料特性のみを評価するため、しゅう動面は加振によって振動しないように十分剛に設計した。また、摩擦力を測定するせん断力センサは摩擦接触面の近くに配置し、パッド試験片の測定位置への保持にはやわらかいゴム素材を用いることで摩擦力の測定ロスを減らすことで摩擦係数の測定精度の向上を試みた。 まず、面外方向に加振した際の剛性について調べた結果、摩擦接触面のしゅう動の有無で優位な差はなかった。次に、実機において鳴きが発生しやすいとされるブレーキ停止直前の低負荷(ディスク周速1m/s以下、制動圧0.25MPa以下)の条件において、加振時の摩擦係数を調べた。その結果、加振による圧力の増減に応じて、摩擦係数も増減する現象が確認された。この摩擦係数の増減は、圧力変動が大きくなるほど顕著になった。また、加振力と摩擦力の関係を調べた結果、加振による変動成分がヒステリシスループを描くことが明らかになった。これらの現象が鳴き発生に影響を与えるか検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ディスクブレーキの鳴きが発生し問題となることが多い低負荷状態における、加振時のパッド摩擦係数を測定する装置が開発できた。この装置で測定された、加振時の摩擦係数の変動や加振力と摩擦力の関係(ヒステリシスループ)は、面内方向の力変動の原因となりうる新たな知見であり、面内鳴き発生メカニズムの解明につながる可能性がある。 一方で、実機の通常制動時に相当する高圧(2MPa以上)付近の計測は現状では不可能であるため、材料試験機として完成したとはいえない。また、測定した摩擦力の変動についても原理が解明されていない。装置を発展させ、測定精度を向上させるとともに、測定結果の評価と鳴き発生との関係を明らかにする必要がある。 当初の予定よりも完成度は低いながらも、研究の基礎となる、微小振幅加振時におけるパッドの動的な材料特性を測定できる装置が開発され、研究を継続する意義を示すに足る実験データを得られたことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度に開発した材料試験機での実験結果から、面外方向の加振によってパッドに加わる圧力が変動すると摩擦力も変動することが明らかになった。パッドは摩擦力が大きい時はディスクと共に回転(スティック)するが、摩擦力が小さくなるとすべって中立位置まで戻る(スリップ)と考えられる。この摩擦係数の変動による面内方向の振動的な挙動とディスクやパッド・キャリパの面内および面外方向の固有振動数が連成して不安定になり鳴きが発生する可能性がある。 2014年度は,ブレーキ実機の構造を簡略化した鳴き試験機を開発し、面内鳴き振動の再現を試みる。鳴きの発生に影響が大きいと考えられるディスクの振動特性とパッドの支持剛性(キャリパの振動特性)を管理し、摩擦力の変動と鳴き発生の関係を調べる。 面内鳴きに影響する要素を整理することで、パッドの材料特性が面内鳴きの発生に与える影響を明確にし、鳴きの低減に適したパッドの材料特性を示すとともに、面内鳴きを低減するために有効なパッドの支持方法の提案を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費の使用用途である実験装置の製作について,試作から改善に用いた費用が予定よりも少ないため. 実験装置は測定の精度面で改善の余地があり,次年度使用額を用いて対応する.
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