2015年度は、面内鳴きの発生理論に基づき、ブレーキの鳴き発生に寄与しないと考えられる箇所を簡略化した鳴き試験機を開発した。面内鳴きを安定して発生させ、観察できる鳴き試験機は、鳴き対策の検討に不可欠である。 まず、面内鳴き振動の発生メカニズムの本質を明らかにするために、新たに2自由度の解析モデルを作成した。ディスクの面内変形を主とする固有振動モードでも、面内方向の数%ではあるが、面外方向にも変形すると考えられる。ブレーキディスクの摩擦接触面であるリング状の部分を支える、薄肉円筒状のハットと呼ばれる部分がねじれるためである。そこで、ディスクは集中定数形で表し、摩擦接触面に対して斜め方向(ねじれ方向、面内方向+面外方向)に変位するとモデル化した。パッドは面外方向のみに変位すると簡易化した。ディスクとパッドの連成振動が不安定になり、実機の面内鳴きに類似した自励振動が発生する解析結果が得られた。 次に、解析モデルで仮定した、ディスクの面外方向と面内方向に同時に振動する固有振動が実在するかを調べるため、面内鳴きの発生が確認されている実機ブレーキディスクの打撃加振試験を実施した。その結果、面内方向の振幅1に対して、面外方向に振幅0.1の割合で振動する固有振動モードが、面内鳴きが発生する周波数付近に存在することが確認できた。 現在、打撃加振で固有振動を確認した実機ディスクと実機ブレーキパッドを用いた鳴き試験機を開発している。この鳴き試験機では、キャリパの構造を単純化し、制動圧やパッド支持状態の管理と鳴き振動の観察を可能とした。解析モデルで検討した鳴き発生条件に基づいて、支持剛性や制動圧の与え方を調整した結果、実機での面内鳴きに対応すると考えられる鳴き振動の発生に至った。鳴き発生条件を詳細に検討し、効果的な鳴き対策を検討するため、安定して鳴きが発生するように試験機を改良している段階である。
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