研究課題/領域番号 |
25420197
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
山崎 徹 神奈川大学, 工学部, 教授 (70272416)
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研究分担者 |
伊東 圭昌 神奈川県産業技術センター, その他部局等, 研究員 (60426343)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 楽器 / 振動 / 衝突 / 非線形振動 / 時間-周波数分析 |
研究概要 |
振動および音響のエネルギー伝搬に着目した手法として,統計的エネルギー解析法(SEA)がある.我々はこれまでに,SEAを用いて自動車や家電製品などの機械製品の振動騒音の低減化を実現してきた.また,SEAを用いてヴァイオリンの振動伝搬を解析し,有益な知見を見出した.知見は,こま構造は弦の振動を表板に一方向で伝える,魂柱はわずかな位置の変更により表板の振動を裏板へ効果的に伝える,というものである.そこで本研究では,こま構造,魂柱構造の振動伝搬メカニズムを明らかにし,これらの特長を活かした機械製品の低振動低騒音化(静かで振動の少ない構造=静穏化)を実現する技術開発を目的としている. 初年度の25年度においては,こま構造,魂柱構造,およびこれらの機械への基礎的検討の三つの観点で研究を実施した. こま構造に関しては,こまと表板は圧着していないことから,結束バンドで固定した二つのアルミブロックの振動伝搬モデルを検討し,接触による非線形振動(Duffing方程式)でモデル化できることを明らかにした. 魂柱構造については,二本のはりを短いはりで接続した単純モデルを対象に,一般的な振動モードを用いた解析手法では説明,設計しがたいことを見出し,SEAなどのエネルギー伝搬に基づく解析手法を検討し,エネルギー伝搬かつ周波数平均結果として考察することにより,魂柱位置の影響を考察しやすいことを明らかにした. 機械への応用の基礎検討としては,デジタルカメラで動画撮影時にズーム音が収録され,音質を劣化させる問題を例として,ズーム時の振動をこま構造模擬部材を介して三脚に振動を逃がすことができるかの検討を行った.その結果,こま構造模擬部材とカメラの間の接触具合により,振動を逃がす程度が異なるが,振動を逃がす(ズーム時の振動を三脚側に逃がす)ことは可能であることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次の三つ,(1)こま構造に関する検討,(2)魂柱に関する研究,(3)機械への応用の基礎検討,について取り組んでいる. (1)こま構造に関する検討:ヴァイオリンのこま構造の振動伝搬メカニズムの仮説を検証するとともに,モデル化を行うために,二つのアルミブロックを用いた二自由度振動系を対象に検討を行った.はじめに,実験により二物体間の振動伝搬は非線形性が現れることを確認した.次いで,二自由度非線形振動系としてモデル化を行い,Duffing方程式で記述される,衝突非線形振動であろうと結論付けた. (2)魂柱構造に関する検討: ヴァイオリンの表板から魂柱を介して裏板に伝搬する振動は,振動伝搬促進として活用できると考えられる.はじめに,この振動伝搬をモードを用いた数値解析を実施したが,モードの視点からでは説明し難いことを見出した.そこで,エネルギー伝搬の観点から考察を行うために,統計的エネルギー解析法モデル(SEA)とエネルギー分布モデル(EDA)を適用,検討した.その結果,周波数平均結果として見ることにより,魂柱位置の影響を考察しやすいことが分かった. (3)機械への応用の基礎検討: こま構造および魂柱構造の振動伝搬は,振動を伝える(逃がす)ことに活用できる.すなわち,こま構造,魂柱構造,それ自体が機械製品の振動伝搬制御要素になりうる.その確認を行うために,こま構造の仮説を考慮した部材の使用を考えた.具体的には,デジタルカメラで動画撮影時にズーム音が収録され,音質を劣化させる問題を例として,ズーム時の振動をこま構造模擬部材を介して三脚に振動を逃がすことができるかの検討を行い,こま構造模擬部材とカメラの間の接触具合により,振動を逃がす程度が異なるが,振動を逃がす(ズーム時の振動を三脚側に逃がす)ことは可能であることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
26年度は,(1)こま構造,(2)魂柱,に関する研究を発展させる.それぞれの推進方策は以下のとおりである. (1)こま構造に関して:ヴァイオリンのこま構造の振動伝搬を模擬でき,FEMモデルの作成が容易なアルミ平板とアルミブロックの簡易構造物を対象とする.伝搬先構造をはりとすることで,入力パワーの周波数分布の検討,はりの減衰度合いによる影響,前年度に明らかにした非線形振動モデルの応用を検討する. (2)魂柱構造に関して:はじめに,はりや平板,実際の機械製品での検討を視野に入れ,FEMおよび実験データに基づき,SEAモデルとEDAモデルを導出するためのソフトウェアを開発する.また,住居などにも用いられる二重窓をイメージし,平板間のつっかえ棒(魂柱)の位置による振動伝搬の影響を考察し,はりを用いた検討結果との対応を吟味する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初,センサーなどの消耗品の購入を検討していたが,対象とした構造物のサイズからすでに所有しているもので足りたため. 三軸加速度計の購入
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