研究課題/領域番号 |
25420207
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
渋谷 嗣 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00154261)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 機能性ゲル / 制振 / 粘弾性体 / センサ / 電気伝導性 / 精密位置決め / 非線形 / 周波数応答 |
研究概要 |
機能性ゲルのセンサとしての性質と制振特性を調べるために,エラストマー樹脂にカーボンブラックを分散した電気伝導性ゲルについて,ひずみと電気伝導特性に関する実験的検討を行った。電気伝導性ゲルに等間隔に電極を設置して,電極間の電気伝導特性からひずみ分布を求めて局所的なひずみ集中をモニタリングすることができることを明らかにした。その応用として構造のヘルスモニタリングのセンサシステムとして有効であることを示した。さらに,精密位置決め装置を想定し,圧電型アクチュエータを適用した機能性ゲルの高速変形に関する応答試験装置を設計製作し,周波数特性試験を行った。 また,磁性粒子を分散した機能性ゲルを用いて,制振特性の評価の観点からせん断変形に関する周波数応答試験を行った。磁性ゲルは大変形荷重下において,磁場の付加によって剛性やヒステリシス応答の非線形性が大きくなることから,ゲルのせん断応答特性に関する非線形同定を行った。ひずみ速度の高次オーダーの項を導入することにより非線形特性を比較的良く同定できることは示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自己センシング機能を有するスマート構造を構築するためには,構造が人間の神経のようなセンシング機能を持つ必要がある。本研究では機能性ゲルを用いた自己センシング機能の確認のために,カーボンブラックを分散した電気伝導性を有する機能性ゲルを用いてゲルの電気伝導特性の計測からひずみ分布を求めることで局所的なひずみ集中をモニタリングが可能であり,構造のヘルスモニタリングのセンサとして有効であることを確認した。さらに,精密構造の制振についてより詳細に検討するために圧電型アクチュエータを適用した機能性ゲルの高速変形に関する応答試験装置を設・計製作し,周波数特性試験を行ったこと。また,磁性ゲルは大変形荷重下における非線形特性について,ひずみ速度の高次オーダーのモデルを導入して,非線形応答の同定が可能になったことが理由として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
精密機器の制振設計や制御系設計のために,機能性ゲルにおける制振特性の周波数依存性について検討し,導電粒子分散ゲルの数理モデルとしてFractional Calculusを用いた構成モデルを作成する。Fractional Calculusを用いると零階微分と1階微分の中間の微係数を定義することができる。ひずみと速度が複雑に連成した効果を容易に表現できることに着目して,導電粒子を分散したゲルの高速変形時における電気・力学特性を同定する。さらに,ゲルのFractional Calculusに基づく粘弾性モデルと機能性粒子の分散した微視構造モデルによる特性評価を行う。 また,磁性粒子を分散した粘弾性ゲルの自己センシング機能の可能性についてのさらに調査し,自己センシング制振を適用したアクチュエータの新しい展開を探索する。また,ゲルの粘弾性による減衰効果と自己センシング機能によるシステムの安定化の効果について精密機器への応用面から検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度(平成26年度)は当該年度の実験データを基に理論解析を中心とした研究計画を当初立案し,次年度の予算を少なく見積もった。しかし,当該年度に研究を進める中で理論解析において必要なデータが生じた場合に追加実験を実施することで,より効率的に研究を進めることができるとの考えに至った。次年度に行う追加の実験と実験装置の修正のために予算が必要になる。 実験装置の修正と実験資材の購入費用の物品費として,次年度使用額を使用する。
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