研究課題/領域番号 |
25420213
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
高山 俊男 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (80376954)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 管内推進装置 / 内視鏡 |
研究実績の概要 |
金型から押し出す方式で押し出されたチューブを回転させながら引き抜く方式で長い螺旋型駆動装置を一体成型で作ることに成功した.ねじりによる引けが出ないよう口金の穴を斜めに切り,ピッチを安定させるため口金をモータで回転させながら押し出し加工することで均一な螺旋型駆動装置を工業的に作成する方法を確立した.25A程度の水道管検査用途として3本の扁平なチューブを束ねた形状で,全体の外形が6mm,気室を分ける肉厚が0.5mmの試作に成功した.材料として塩化ビニルとスチレンを用いて試作を行った.塩化ビニルは比較的硬いが,パイプ径がある程度決まっていればそのまま駆動装置として使え,スチレンは柔軟ではあるが直径方向にも大きく変形しすぎるために,変形方向を拘束する必要があることも分かった.また塩化ビニルは変形を繰り返すうちに装置先端が圧縮された気体により熱を持って裂けることが分かった.これは装置先端に小穴を設けて,空気を流しだすことで解決できた.また推進によって装置が捻じれる問題は,スリップリングをモータで駆動して解決した. また医療用途としては,小型化に関してはφ2.2mm径の駆動装置を開発し,2.5mmのパイプ内で推進でき,血管等で利用できる可能性があることを確認した.チューブを束ねるだけでは膨張によりパイプ内に詰まってしまい動けなくなることから,φ1mmのチューブ3本を束ね,糸を周囲に巻いて生ゴムを浸透させる方法で作成した.また手動式の軟性内視鏡としてワイヤ駆動による三つ編み屈曲運動推進装置の動作原理の確認もした. さらにチューブの本数を増やす方向としては,5本のチューブを編むことで,1本を電線やチャンネルとして利用しつつ,残りの4本を用いて波上の屈曲動作を生成できることを確認した.さらに6本のチューブを組み紐状に編むと,前後動と回転動作を自由に行えることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の計画では,ねじれ解消のために,先端部だけを駆動する方法等を考えていたが,一般家庭における水道管検査では,より安く簡単な装置が求められており,特に装置その物は使い捨てができることが望ましいことが分かった.そのため押し出し加工に捩じりを加えることで,一体型の装置を安価に製造する方法を確立し,それをスリップリング荷接続して,回転を抑えながら駆動する方法を確立できたことは大きな進展であると考えられる.またシリコーンを用いた試作器により腸の中でグリップ力を得る方法は見つけられなかったが,一体型で装置を作れたことにより,製造後に外部に皮をかぶせることができるようになることから,選択可能な表面は増えたと考えられる. ただし,グリップ力がない場合でも,小腸の屈曲部を通過させやすくするためだけに先端を駆動する方法の有効性は確認されているので,先端だけを駆動する切り替え装置の開発は継続して行っている. またチューブの本数を増やす方法として4本と6本を提案し,6本では推進と回転を独立に駆動できることが確認された.内視鏡の推進装置として,推進と回転を独立に駆動させる研究はまれであり,これもまた大きな進展と考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
まず塩化ビニルによる一体成型で作られた螺旋捻転装置の運動性能の測定を行う.家庭用の水道管を想定し,エルボー部を含めた5m以上の長さで動作試験を行う.また運動性をあげるため,スチレンで制作された個体に糸を巻くことでより高い運動性能を実現させる.また実用化のためには変形後の螺旋の外径が検査対象の管径に合わなければならず,押し出し時のねじり角度と変形後の外径の関係を定式化する. 6本編みチューブに関しては推進と回転を同じチューブで行っており,駆動順番を変えるだけで推進と回転を独立に駆動できることから,両者のアクチュエータを個別に持つよりも効率が良いと考えられる.そこでチューブの駆動方法に関してより系統立てて解析を行う.またパイプの内側に6本のチューブを取り付けて,チューブの中央に通した軸を軸方向と回転方向の独立に駆動可能なアクチュエータとして利用できる可能性がある.磁石や電気を必要としないことから,MRI対応の鉗子把持装置として利用できる可能性があり,新たにこの研究を立ち上げる予定である. また医療用としては,表面処理により腸内でのグリップ力を高めることは難しいと判断するが,手動による挿入時に先端部だけを駆動して,通過困難な屈曲部の通過を補助できることから,そのための流路切り替え式の先端部駆動装置を続けて開発する.これまでは圧力をパルス状に送ることで流路を切り替える予定であったが,流路が長くなると駆動速度が遅くなることから,一定圧力で自励的に流路を切り替える方式に変え,開発を行う.一方で現場では手動で操作する装置の方が容易に導入が図れることから,ワイヤ駆動式の装置の開発も継続する.昨年度にワイヤ駆動による三つ編み屈曲装置の原理を確認したが,3本のワイヤをマニュアルで周期的に動かすには慣れが必要であったことから,簡易に駆動する操作部の開発も本年度に行う予定である.
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