本研究では高強度化学合成繊維を用いた駆動機構の基礎的諸特性の解明と,これを用いた駆動メカニズムを圃場モニタリング用六脚一腕作業移動型ロボットに適用することである.25年度は基礎的特性試験として(1)固定プーリ径(D)とワイヤ径(d)の比率(D/d)と破断強度の関係を計測し,化学合成繊維であってもD/dが小さくなるとステンレスワイヤと同様に強度が低下する傾向があることを明らかにした.(2)受動プーリの数と張力伝達の効率の関係を計測し,プーリ数4の場合でも伝達効率は99.5%を確保できることを明らかにした.(3)ワイヤ端部固定法としてクランプ・結び・カシメ・縫製を比較検討し,結びでは50%程度に引張強度が低下すること,カシメ・縫製では80-90%程度の引張強度であることを明らかにした. 26年度は(4)JIS G3535に基づくワイヤの繰り返し曲げ試験機を製作し,ステンレスワイヤ・高密度ポリエチレン繊維ワイヤ・PBO繊維ワイヤについて耐久性試験を実施し,PBO繊維ワイヤのみおよそ70%の強度低下があることを実験的に明らかにした. また実ロボットシステムとして,六脚一腕型作業移動ロボット,ワイヤ干渉駆動型アーム,四脚歩行ロボットの3種類の駆動系を改良し,実際に稼働させた.27年度は繰り返し曲げ試験のN数を増やし強度低下の傾向をより詳細に検討し,高密度ポリエチレン繊維が高い耐久性を有することを明らかにした.この結果に基づき,六脚一腕型作業移動ロボットと四脚歩行ロボットの駆動用ワイヤを変更し,駆動系の信頼性を向上することが出来た.また六脚一腕型作業移動ロボットを遠隔操作し,観察対象とする育成中のリンゴ表面に歩行により近づき,アームに装備したセンサ機器で詳細に観察することに成功した.ワイヤ駆動の腕肘関節は数か月放置しても緩むことなく駆動可能であり,高い信頼性を有する駆動系を実現した.
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