研究課題/領域番号 |
25420216
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小林 俊一 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (50225512)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バイオミメティクス / ロボティクス / バイオメカニクス / 流体内推進 |
研究実績の概要 |
本研究は災害時移動用生物規範型水中推進ロボットを開発するものであり,魚類の尾びれを規範とした粘弾性フィンを用いている。この粘弾性フィンは常に最適な剛性となる機能を有するもので,柔軟な粘弾性フィンにダイラタント流体を封入し,常に最適な剛性を得るシンプルかつ高効率な特長がある。平成27年度はこの粘弾性フィンの推進性能向上を前年度から継続して行い,また,粘弾性フィンをロボットの推進器として用いるための基礎設計を行った。その内容は次の通りである。 1.災害時移動用生物規範型水中推進ロボット用の粘弾性フィンの性能向上 従来から用いているダイラタント流体であるウーブレック(片栗粉と水の懸濁液)の粘度-せん断速度の関係について,片栗粉の量に関して検討した。これよりフィンの設計に関して最適なウーブレック調製をするためのデータを得ることができた。また,ウーブレックは時間が経つにつれて沈殿してしまう特性があり,フィンの前縁から後縁の方向に配向させた繊維を含むウーブレックを封入させて,ウーブレックの保持ができて長時間による動作が可能となり,流体のせん断速度向上によるダイラタンシー効果の向上を確認した。 2.粘弾性フィンのロボット推進器としての基礎設計 粘弾性フィンをロボットの推進器として用いるため,推進力の向上として,フィン後方を翼型形状として推進力の向上を図った。特に,ダイラタント流体が多く含まれる部分で変形するように工夫した。また,長期保存が可能なダイラタント流体として,シリカナノ粒子を用いた懸濁液を用い,その粘度特性の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究のねらいである,アクチュエータを備えた可変剛性機構を用いずに最適剛性を実現する粘弾性フィンを開発することができ,ロボットに適用する準備もできた。しかし,災害環境における水中推進特性についての検討がまだ残されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は次の事項について取り組む。 災害環境として,瓦礫や漁網などがある環境を再現して粘弾性フィンの実験を行う。また,同フィンの優位性の検討として,スクリュプロペラに関しても同じ環境で実験を行い,推進特性や推進器破損の危険性などについて比較・検討する。その結果を考慮して,フィールド実験に適応した水中推進ロボットの開発を行う。また,長期使用に適した新規ダイラタント流体を用いた推進機構についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
災害時環境でのロボット化のための研究が遅れ,そのための消耗品の購入が予定よりも少なくなったためである。また,旅費は情報収集や資料収集にあてる事が出来たが,研究成果の発表ができなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は,災害時移動用のための生物規範型水中推進ロボット開発のための消耗品を購入し,研究の遅れを取り戻す。また,次年度では学会の講演会で本研究の成果発表を積極的に行いながら論文の投稿も行い,平成28年度請求額と合わせてそれらの経費に充てる。
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