研究課題/領域番号 |
25420217
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
稲垣 伸吉 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80362276)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ロボティクス / 分散制御 / 多脚歩行ロボット / ムカデ型ロボット / 接地点追従法 / 不整地歩行 |
研究概要 |
本研究では、未知で複雑な環境を移動できるムカデ型多脚歩行ロボットを実現することを目標に、分散型歩行制御法「接地点追従法」を改良し、高次の運動計画と分散制御のローカルな適応的運動生成とが一貫した分散型歩行制御法を確立することを目的にしている。その実現に向けて、平成25年度は次の4つの課題に取り組んだ。 (1) 形式検証手法を利用して、ムカデ型多脚歩行ロボットの制御パラメータと構造パラメータの統合的設計手法を開発した。接地点追従法により駆動されるロボットの挙動を時間オートマトンにより記述し、歩行可能性を満たすパラメータの組みを、形式検証を用いて絞り込むことで、有効なパラメータの範囲を得ることが出来る。コンピュータシミュレーション(以下、CS)により有用性を検証した。(国内学会発表1件) (2) 深度センサを用いてロボット周辺の環境地図を作成する方法と、その地図において最適な接地候補点をリアルタイムに計画する接地点計画手法を開発した。さらに、接地点計画手法と接地点追従法へ融合し、高次の運動計画と局所的な運動制御の一貫的な制御法を実現することができた。CSにより計画がない場合に対して不整地登破率が上昇することを明らかにした。(国内学会発表1件) (3) ムカデ型多脚歩行ロボットが、脚先の障害物への衝突や踏み外しや突発的な外乱による脚先が浮き上がりなどにより、歩行継続が困難になる現象を防ぐために、各脚の局所的環境適応能力として脚先の可変インピーダンス制御を開発した。これにより不整地においても接地率を増加できるCSにより明らかになった。 (4) 能動体節間関節と脚を統合的に制御する手法を開発した。脚の制御法「接地点追従法」を拡張し、脚の制御と矛盾なく体節間関節を制御することができる。CSにより不整地登破率が上昇することを明らかにした。(国内学会発表1件)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時の研究計画において、平成25年度は高次の運動計画と局所的適応にそれぞれ取り組むことになっていた。高次の運動計画については【研究実績の概要】の(2)のように、また局所的適応については【研究実績の概要】の(3)(4)のように実施した。また、平成26年度以降に実施予定であった「局所的適応・高次の運動計画・歩行制御の統合的パラメータ設計手法の開発」について、【研究実績の概要】の(1)のように先んじて行うことが出来た。その意味で、未知で複雑な環境を移動できるムカデ型多脚歩行ロボットの実現に向けて研究を順調に進めることが出来た。一方で、項目(1)~(4)いずれにおいても物理シミュレータでの検証しか出来ておらず、実機での検証はできなかった。これは、いずれの項目の検証に対しても、申請者が開発した既存のロボットでは能力が不足することが明らかになったためである。次年度は開発した制御手法を検証することができるロボット実機の開発を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成25年度実施の高次の運動計画と局所的適応に関する制御法を引き続き開発・改良していくと共に、これらを統合的に扱うために、局所的適応・高次の運動計画・歩行制御の統合的パラメータ設計手法の開発を進める。また、【現在までの達成度】に書いたように、提案手法を検証するためのロボット実機を新たに開発する。まずは6脚歩行ロボットを開発し、その後ムカデ型多脚歩行ロボットへと拡張する。6脚歩行ロボットを最初に開発するのは、ムカデ型に比べて扱いが容易であり、提案する制御手法を別個に検証するためには十分だからである。6脚歩行ロボット開発のノウハウを生かしてムカデ型ロボットを開発し、室内と屋外での実験へと進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題を申請する際に購入を予定した物品(3Dプリンタ)が、研究費の配布時には値上がりをしており購入することが出来なかったことが、次年度使用額が生じた主な原因である。3Dプリンタを新規に導入できなかったことの代替として、性能は劣るが申請者が有する機器の再利用を進めた。また、実験のデータ取得に必要となる物品(ステレオラベリングカメラ)を新たに購入し、実験環境の整備を行った。 初年度の研究結果において、本研究課題において提案した手法を検証するためには、ロボット実機(6脚ロボット)を新たに開発する必要があることが明らかになった。この開発は本研究課題を申請する際には計画していなかった。そこで実機を開発するためにこの予算を使用する。
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