研究課題/領域番号 |
25420227
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
小山 大介 同志社大学, 理工学部, 准教授 (50401518)
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研究分担者 |
中村 健太郎 東京工業大学, 精密工学研究所, 教授 (20242315)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 可変焦点レンズ / レンズアレイ / 音響放射力 / 超音波 / 圧電振動子 |
研究概要 |
より単純な構造で温度安定性を有する透明ゲルを用いた超音波駆動式可変焦点レンズを開発した.開発したレンズは,径30 mmのアニュラ型超音波振動子の片端にPETフィルムを接着し,中心部にレンズの役割を果たす透明粘弾性材料であるシリコーンゲルを充填する構造である.ゲルに流動性はなく,レンズを傾けてもその形状はほとんど変化しない.レンズ外形,駆動周波数,振動モードは有限要素解析により決定し,共振周波数222 kHzの径方向振動モードを用いた.レンズを電気的に駆動すると音響放射力がレンズ表面に働きレンズは静的に変形し,その変位は入力電圧に伴い増加する(21 V入力時の変位はおよそ150 μm).レンズ変形時の光学的焦点位置を光線追跡によって算出した結果,入力電圧値の増加に伴い透過光が集束し,焦点距離は短くなることがわかった(21 V入力時の焦点距離は24 mm).開発したレンズと市販のレンズ付高速度カメラを組み合わせ光学画像を撮影した結果,焦点位置を10 mmから23 mm の位置へ変化する際の応答時間は0.3 秒であった 本技術を応用した可変焦点レンズアレイを開発した.レンズアレイは4つの矩形超音波振動子,ガラス基板,シリコーンゲル膜で構成される.超音波振動子を駆動すると,ガラス基板に格子状たわみ振動モードが励振され,ゲル膜に働く音響放射力によってレンズアレイが形成される.レンズピッチは基板たわみ振動の半波長と一致し,周波数が高いほど小さい.単一レンズの場合と同様に,駆動電圧の増加により焦点距離は減少し,電圧によって焦点距離を制御でき,レンズピッチと焦点距離を同時に制御可能なレンズアレイの作製に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時に計画していた想定する使用環境に耐えうる可変焦点レンズの開発に成功した.温度安定性を有するシリコーンゲルをレンズ材料に用いることにより,従来型の2液性可変焦点液体レンズに比べて温度安定性は格段に向上した.しかしながら目標の一つである応答速度の高速化については,さらなる改善が必要である.これはレンズの応答速度がレンズ材料の粘弾性に大きく依存するためであり,今後レンズ材料の開発を含めて新たに材料を選定する必要がある. レンズ挙動の数値解析に関して,有限要素解析によりレンズ内の音場分布を計算し,レンズ変形形状の算出を試みた.計算結果より定性的な変形形状は推定できるものの,定量的に変形形状を算出するためには,レンズ界面変位,音場,音響放射力との練成解析が必要である.現在用いている有限要素解析ソフトではこれらの計算が困難であるため,今後他手法による数値解析について検討する必要がある. レンズアレイの開発について,当初の計画から前倒しになったものの概ね計画通りの成果を挙げることができた.しかしながら単一レンズの場合と同様に,応答速度の高速化に関しては今後の改善が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
①単一レンズについて,レンズ径を1/10に小型化することにより小型・高速化を狙う.また応答速度向上のため,ゲル材料の開発を含めて再選定を行う.振動子電極を分割し,入力信号を制御することにより,ゲルを非軸対称に変形し,径方向への焦点位置制御を試みる. ②光ファイバレンズ先端にマイクロレンズを設け,高周波超音波をファイバ中に伝搬させることにより,光ファイバ型マイクロレンズを開発し,血管内内視鏡用ヘッド等へ応用する. ③これまでに開発したレンズアレイについて,より小型・高周波化することにより,マイクロレンズアレイを開発する.特に高周波化に関して,圧電基盤と櫛形電極による弾性表面波を利用した方法を検討する.また振動子駆動条件を制御することにより,基板平面内のレンズ移動や,シリンドリカルレンズアレイの作成など,レンズの任意形状に制御する手法について検討する. ④レンズ材料として,紫外線硬化樹脂を用いることにより,超音波を利用した樹脂成形技術について検討する.はじめに初年度に開発した技術を利用し,レンズアレイを作成する.
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定であった有限要素解析ソフトについて,所属研究機関において使用環境が整ったため,購入の必要性がなくなった.代わりにレンズ透過光分布測定に必要なフォトレシーバを購入し,その差額を次年度への繰越金とした. レンズの使用周波数について更なる広帯域化を考慮し,より広帯域のパワーアンプの購入を予定している.
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