研究課題/領域番号 |
25420234
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研究機関 | 鈴鹿工業高等専門学校 |
研究代表者 |
伊藤 明 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (40259883)
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研究分担者 |
田村 陽次郎 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20163701)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 筋肉モデル / 表面筋電 / ロボットアーム |
研究実績の概要 |
人間が骨格を動かし身体活動をする時、関節を介して筋肉が収縮することで運動を行っている。この筋収縮過程は、脳から運動神経を伝搬し筋肉へ電気パルス刺激信号が到達することで生じる。この筋電位は、筋電義手や外骨格型パワーアシストスーツの入力として用いられ始めている。 共同研究者の田村・斉藤は今までに、人間の複雑な非線形運動を再現できる筋肉モデルを今までに報告している。 本研究は、新たに小型表面電極(電極径φ1mm)を用いた4チャンネルの表面筋電位(SEMG)測定回路を製作し干渉波形である筋電位波形から骨格筋運動単位(Motor Unit: MU)への電気刺激パルス(活動電位)を正確に検出することをめざし研究を行った。2行2列に配置された4チャネルSEMG測定波形から、運動神経に沿って伝搬する活動電位の遅延時間と、チャネル間の信号強度比を比較した。最大随意収縮力の15%程度の力を上腕二頭筋に発揮した時、測定されたSEMG波形の中に3つのMUからの信号を分離することができた。1秒間あたりの刺激パルスの発生割合(発火頻度)から、そのうちの一つは遅筋からの信号で、残り二つは速筋からの信号であると推測された。 また、現有している多関節ロボットアーム(KINOVA社製、全長: 90cm, 6軸, 最大可搬重量: 1.5kg, USB接続にてPCから制御可能, APIがメーカから提供)をパソコン(OS Windows8)から制御するための予備実験として、Visual Studio C++を用いた基本的な駆動プログラムの製作と動作の検証を行った。 今後、得られた各MUからの活動電位波形を筋肉モデルの入力として数値計算を行い、それぞれの筋収縮力の総和を求め、ロボットアームへの出力指令値を計算しロボットアームを駆動する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画は、『Recruitment Order を考慮した複数の筋肉群からの活動電位の分離』であった。骨格筋を構成する二種類の筋肉である遅筋(slow twitch muscle)と速筋(fast twitch muscle)は、疲労耐性が異なる。遅筋の方が疲れ難く、速筋寄り身筋収縮に早く参加しする。より大きな筋収縮力を得るために、遅筋が収縮参加した後に速筋が収縮に参加する。このRecruitment Orderを筋電位波形からの活動単位推定を行う際に考慮することとした。 4チャンネルのSEMG測定回路を設計・製作し、ヒト上腕二頭筋の等尺性随意収縮時の筋電位波形を測定した。最大随意収縮力(MVC)の15%程度の力を上腕二頭筋に発揮した時、3つのMUを推定した。上腕は遅筋と速筋の構成割合がほぼ等しく、Recruitement Orderが速く最初に収縮参加する遅筋は皮膚表面から深い位置に存在し、速筋は浅い所に存在することが既に知られている。本研究の実験結果でも、最初に観測されるMUからのSEMG信号波形の強度は小さいことから遅筋が先に運動参加していることが確認できた。大きな力を出すとともに参加し始めるSEMGは信号強度が高く、これは速筋であることが推測され既に報告されている結果と矛盾しない。 また、本研究で推定された遅筋と速筋の発火頻度(パルス発生頻度)はそれぞれ約10Hzと約20Hzであった。これは、随意収縮時に脳から生成される電気刺激パルスが、遅筋と速筋とで異なるためであると考えらえる。既に報告されている報告では、外部電極用いた周波数応答について二つの筋肉を比較すると、その飽和周波数は遅筋は約20Hz程度、速筋は約40Hzであることが知られている。脳で生成される活動電位パターンもこの飽和周波数の比率にほぼ近いことがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
作成した4チャンネルSEMG測定回路の小型化を検討する。表面実装基板を用いて部品面積の縮小を図る。 推定された各運動単位の活動電位を、筋肉モデルの入力として並列接続されてた筋肉群の力を数値計算により求め、実験結果と比較を行う。 得られた力推定値をロボットアームコントローラに加え、表面筋電位によるロボットアーム駆動の検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、表面実装基板の外部への試作依頼予定回数が少なかったことがある。これは、回路図エディタを用いた設計に当初の予定よりも多くの時間を要したためである。もう一つの理由として、当初購入予定であった計測機器の仕様が実験を行うために十分であるかを確認する必要が生じ、次年度に購入を先送りすることにしことがある。
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次年度使用額の使用計画 |
基本的な回路基板設計はH26年度に完了したので、今後は各部分の改良を図り、必要に応じて外部へ表面実装基板の試作依頼をする予定である。また、予備実験により計測機器として実験を行うための機種選定が既にできたため前年度からの繰り越し予算をもとに購入を行い実験を行う。
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