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2013 年度 実施状況報告書

圧電単結晶の共振を利用する超小形ACアダプタ実用化のための高効率駆動回路の実現

研究課題

研究課題/領域番号 25420239
研究種目

基盤研究(C)

研究機関山形大学

研究代表者

広瀬 精二  山形大学, 理工学研究科, 教授 (70007201)

研究分担者 田村 英樹  東北工業大学, 工学部, 准教授 (90396581)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード高効率駆動回路 / 圧電トランス / 圧電単結晶 / スイッチング / ACアダプタ
研究概要

25年度は,研究実施計画に基づいて下記のような研究を行った。
1.圧電単結晶を用いた圧電トランスの最適構成の検討:圧電単結晶LiNbO3の薄い矩形板の上下面に金蒸着電極を施し交流電圧を印加すると,機械的な共振振動を励振する。このとき最も効率良く励振されるのはラーメモードと呼ばれる共振振動であり,他に起きる振動は不要振動とみなされ極力抑え込まれた方が良い。本研究では,(1)有限要素法解析によって最適形状の探索を行った。(2)トランスとしての電力効率95%以上を達成できることを示した。(3)共振振動現象を利用するので,支持構造が重要であり,安定支持構造の探索を行った。(4)この結果,共振尖鋭度Q(共振の良さを表す指標)≒10000程度を実験的に達成し,電磁トランスの10倍以上のQ値を得ることができ,高性能なトランス実現の可能性を示した。
2.圧電トランス駆動用スイッチング回路動作の検討:高効率高性能な圧電トランスを実現できることがわかったので,これを効率良く駆動するスイッチング回路の検討を行って次のような結果が得られた。(1)代表的なパワーMOSFET 7種類について1MHzまでのスイッチング基礎持性を調べた。この結果,圧電トランスの動作周波数である350KHz前後の周波数における性能が良好な素子としてBUZ73Lを選定した。(2)MOSFETの端子間容量によって,スイッチング特性は200KHz程度以上では著しく劣化することがわかった。 (3)MOSFETの制御入力端子に入力される矩形波パルス電源の電源インピーダンスを低下させていくと,スイッチング駆動波形が改善され,電力効率が最大で10%改善できることを示した。(4)MOSFETの出力端子の容量は,インダクタンス挿入により両者による電気的共振を励起して電力効率を40%程度改善できることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

超小形高効率のACアダプタ実現に向けた取り組みは,以下の理由から,おおむね順調に進展している,と判断される。
1.高性能圧電トランス実現可能性の確認:(1)圧電単結晶LiNbO3を用いた圧電トランスの動作特性を,有限要素法による詳細な検討によって明らかにした。これにより,電力変換効率95%以上のトランスが可能であることがわかった。また,振動デバイスの課題である支持固定も,トランス性能を低下させずに安定な支持が可能であることを示した。(2)解析結果に基づいてLiNbO3圧電トランスを試作して実験を行った。この結果,共振尖鋭度Q≒10000程度で,電磁トランスの10倍以上のQを有する高性能なトランスが得られることがわかった。(3)圧電トランスの外形寸法は,15mm×22.5mm×0.4mmと小形軽量であり,周波数帯は350KHz前後である。この周波数帯において高効率のスイッチング回路が実現できれば,駆動回路を含めたトータルで高性能化できる見通しが得られた。
2.高周波帯でのスイッチング回路改善の工夫:(1)スイッチング基礎特性を調べ,350KHz前後での使用に対応可能なパワーMOSFETの選定を行った。(2)MOSFETの制御入力パルス電源の電源インピーダンスを小さくして,MOSFET入力端子間容量の影響を抑えてスイッチング駆動波形改善を可能とした。(3)MOSFETの出力端子容量の影響を軽減するために,MOSFET出力端子にインダクタンスを挿入することによって電気的共振を励起し,スポット周波数においてではあるがスイッチング効率の大幅な改善を行った。

今後の研究の推進方策

これまでの研究進捗状況に基づき,今後は以下のように研究を推進していく。
1.圧電単結晶LiNbO3を用いた圧電トランスの動作特性の検討:圧電トランス本体の性能を更に向上させ,また特性や支持構造の更なる安定化をはかるために,以下の項目について検討を行う。(1)不要振動が及ぼす影響の詳細な検討:電力効率への影響,電力最大周波数に自動追尾する回路への影響,負荷変動に対する動作特性安定性への影響,(2)支持構造の更なる簡易化,安定化,(3)出力電圧および電力変換効率の負荷抵抗依存性の詳細な検討
2.スイッチング励振回路の更なる高効率化;これまでの研究によって,高周波数帯でのMOSFETスイッチング特性が把握できたが,励振効率はまだまだ不十分な値しか得られていない。今後は,以下の事項について詳細に検討を行い,十分実用に耐えるように高効率化の検討を行っていく。(1)MOSFETの制御入力波形改善による電力効率高周波特性の改善,(2)MOSFET出力端子に挿入するインダクタンスの最適化,高Q化,(3)MOSFETスイッチング回路と圧電トランスのインピーダンス整合の詳細な検討

次年度の研究費の使用計画

1.学会発表や研究打ち合わせなどに計上した旅費の使用は,旅費の予算額\500,000に対して約\150,000少なく\357,919であった。使用額が少なかった理由は,学会発表会に参加した研究者の方々,企業関係者などと情報交換,研究打ち合わせを行ったりしたため,研究打ち合わせとして使うべき旅費予算を執行する必要がなかったことに起因する。
2.物品費として計上した予算は\900,000であったが,”その他”経費も合わせての実使用額は\782,058であり,約\120,000ほど使用額が予算額に比べて少なかった。使用額が少なかった理由は,保有していた圧電単結晶材料や電子部品の一部を有効活用できたことにより,結果的に経費節減に至ったためである。
1.旅費の使用計画:旅費としての使用は学会成果発表の他,今後は研究遂行の円滑化を目指して企業との情報交換,研究打ち合わせも回数を多くしていく予定であり,翌年度助成金と合わせて有効に使用して行く。
2.物品費の使用計画:今後は圧電単結晶の共振を利用するACアダプタの駆動回路の精度の高い設計・製作を行う必要があり,高性能な半導体部品や小刻みな表示値の受動回路部品群,共振周波数自動追尾制御回路用部品などの納入に,翌年度分の助成金と合わせて有効に使用して行く。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014 2013

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] 大振幅状態で顕著な圧電振動子損失の分離測定法における測定精度の検討2014

    • 著者名/発表者名
      広瀬 精二,菅原 千聖
    • 学会等名
      日本音響学会研究発表会
    • 発表場所
      東京都 日本大学
    • 年月日
      20140310-20140312
  • [学会発表] 圧電トランスの励振に適したMOSFET スイッチング回路の検討2013

    • 著者名/発表者名
      渡邉 綾斗,大島 卓也,山吉 康弘,広瀬 精二
    • 学会等名
      日本音響学会研究発表会
    • 発表場所
      豊橋市 豊橋技術科学大学
    • 年月日
      20130925-20130927
  • [学会発表] 圧電単結晶LiNbO3 の2x3次・3x2次ラーメモード共振を用いた圧電トランス2013

    • 著者名/発表者名
      大島 卓也,渡邉 綾斗,山吉 康弘,広瀬 精二
    • 学会等名
      日本音響学会研究発表会
    • 発表場所
      豊橋市 豊橋技術科学大学
    • 年月日
      20130925-20130927
  • [学会発表] 圧電振動子ハイパワー特性測定システムの安定化,操作性向上の検討2013

    • 著者名/発表者名
      伊藤 大輔,横田 夏輝,山吉 康弘,広瀬 精二
    • 学会等名
      日本音響学会研究発表会
    • 発表場所
      豊橋市 豊橋技術科学大学
    • 年月日
      20130925-20130927

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公開日: 2015-05-28  

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