「省エネ法」の改正により、2015年4月からモータ本体の省エネルギー化を目指したモータのトップランナー化が始まった。本研究では冷蔵庫に使用されるコンプレッサ用駆動用モータとして、インバータを使用しないで自己始動が可能、さらに、同期運転時にはプレミアム効率を達成できるように最適設計した単相自己始動形永久磁石モータの試作と実験による評価を行った。 昨年度に試作したモータの同期運転時の負荷特性および始動特性の実験をそれぞれ行い、その研究成果を2015年9月にスペインのバレンシアで開催された国際会議ISEF2015で発表した。商用電源AC100Vを用いた負荷特性の実験結果から、定格出力70Wにおいて、効率が82%に達した。IEC(国際電気標準会議)では、現在出力120W以上の低電圧ACモータに対して、プレミアム効率(IE3)、スーパープレミアム効率(IE4)が規定されている。それによると、50Hz、2極、120WでのIE3、IE4の効率値がそれぞれ60.8%、66.5%であることから、本試作機はプレミアム効率は勿論スーパープレミアム効率を大きく超えていることが判明した。また、十分な始動能力をもつことを実験的に検証するため、電源投入位相と回転子初期位置の影響について、電源直入れ始動の実験を行った。実験を行うにあたり、電源投入位相が容易に調整できるプログラマブル交流電源を1台購入した。実験結果から、電源投入位相と回転子初期位置の最適な組み合わせのときに、定格トルクの80%の一定負荷の直入れ始動でも同期引き入れ可能であることが判明し、十分な始動能力をもつことを確認した。 本研究の目的であったインバータを使用しないプレミアム効率単相自己始動形永久磁石モータの開発に成功したといえる。今後、トップランナーのモータとして本モータの最適設計手法について国内外の学会を通して広く公開予定である。
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