研究課題/領域番号 |
25420242
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
山納 康 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (30323380)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 半導体保護用ヒューズ / パワーエレクトロニクス / 短絡保護 |
研究実績の概要 |
インテリジェントヒューズは、事故電流のような過大な電流が通電されたとき、ネットワーク状に形成されたヒューズエレメントの遮断部が電流により溶断し、そのアーク放電の特性によってエレメント内の電流経路を変化させるヒューズである。この電流経路の変化により、通常の電流では並列に流れていた電流が、直列にジグザグ状に転流するようになり、その転流によって遮断性能を向上させることを目論んだものである。 インテリジェントヒューズの基礎研究として、その基本単位ヒューズを試作し、遮断試験を行い、転流により遮断性能の向上を目指す。この基本単位ヒューズエレメントができれば、これを直列・並列に使用することで、様々な定格電圧や定格電流に応用することが可能となる。単位ヒューズエレメントは、セラミック上にエッチングにより銅のパターンが形成されたもので、更に厚メッキ部と薄メッキ部があり、薄メッキ部には事故電流が流れたときに溶断して、アークが発生するように狭小部が設けられている。昨年度に引き続き、単位ヒューズエレメントはa部とb部がそれぞれ対角上に2点あり、中心部に連絡ヒューズ部c部が形成されたもので、a部とb部のアーク特性に違いが生じるようにヒューズエレメントの構造を変化させた。 具体的には、a部のアーク時間は短く、b部のアーク時間は長くなるように設計した。ただし、これらのa部とb部の狭小部は、自由に形状を決められる訳ではなく、それぞれの抵抗値と電流密度が等しくなるように設計されている。このa部とb部だけで試験したところ、目論見通りアーク時間に差を生じさせることができた。これらa部とb部を組み合わせて、単位ヒューズエレメントとして試験したところ、a部とb部のアーク特性の違いにより、電流経路を変化させることはできたが、現状の単位ヒューズエレメントの構造では遮断特性の向上までは至らなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単位ヒューズエレメントのa部とb部のヒューズ形状を異なるものとすることで、アーク時間に明確な差を生じさせることができ、インテリジェントヒューズの概念通りに、a部とb部の電流のバランスが崩れて、電流経路を変化させることはできたが、肝心の遮断性能の向上には至っていない。この原因として、電流経路の変化が一時的なもので、再び元の電流経路に戻っている可能性が考えられる。今後は、この転流が確実にできているかどうかを観測できるように測定系を改良して、インテリジェントヒューズ内部の様子を光学的に観測する。一部ヒューズボックスを改良してヒューズ内部の様子を観測できるように改造した結果、高速度ビデオカメラによってヒューズ内部の様子を撮影することができるようになった。
|
今後の研究の推進方策 |
ヒューズ内部の様子を観測できるように測定系の改造を行い、インテリジェントヒューズの単位ヒューズエレメントで遮断時のアーク放電の様子を高速度ビデオカメラで観測できるようにする。ビデオ観測のデータを基にしてインテリジェントヒューズとして機能するように単位ヒューズエレメントのa部とb部および連絡ヒューズc部の狭小部の構造を最適化する。
|