本研究で開発しているヒューズは、電流通電時にネットワーク状に形成されたヒューズエレメントの遮断部が、そのヒューズエレメント内部のアーク放電の特性によってエレメント内の電流経路を変化させるヒューズである。この電流経路の変化により、通常の電流では並列に流れていた電流が、直列に転流するようになり、その転流によって直列遮断点数の増加による遮断性能の向上を目指している。 インテリジェントヒューズの遮断過程を観測するために、ヒューズ内部の発弧の様子を高速度ビデオカメラで観測できるようにアクリル製のヒューズボックスを構築し、本ヒューズの遮断の様子を観察し転流の様子を確認した。インテリジェントヒューズの基本単位ヒューズエレメントを試作した。このヒューズエレメントはa部とb部がそれぞれ対角上に2点あり、中心部に連絡ヒューズ部c部が形成されたもので、a部とb部のアーク特性に違いが生じるようにヒューズエレメントの構造を変化させた。b部の直列遮断点数と並列遮断点数が1個であるのに対し、a部は直列遮断点数が4個で並列遮断点数が16個まで増やしたもの試作した。また、単位ヒューズエレメントを2段と3段にした高圧用のインテリジェントヒューズも試作し同様に遮断試験を実施した。 遮断試験では目論見通りアーク時間に差を生じさせ、a部とb部のアーク特性の違いにより、電流経路を変化させることはでき、単位ヒューズエレメントを2段にしたものにおいても、電流経路を変えることができることがわかった。ただし、2段にしたものでは、転流が不十分なところも見られた。これは遮断試験の電流や電圧の条件によって、転流がされにくい状況になることがあると考えられる。高速度ビデオカメラの測定により遮断の発弧のタイミングとヒューズの溶断・発弧によるアーク電圧の上昇過程の様子が克明に観測することに成功した。
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