本研究で製作したアルキメデスポンプ模擬実験装置(全長約2m,直径約0.3m)において,エネルギー変換効率を求めた。傾斜角を23°から38°,汲み上げ高さ0.78mから1.23mまで変えて,回転数30~75[rpm]の定常状態で,摩擦等によるロスを差し引いた値として,最大エネルギー変換効率約42%を得た。 風況データについて,平成25年度から収集を開始し約2年間蓄積した。この風向風速データの一部を利用し,揚水発電によるウインドファーム出力の安定化について,風上検知法,加重平均移動法,およびこの両者を用いる3種類のウインドファーム出力不足判定により,水力発電を起動する運転シミュレーションを行った。シミュレーションを行った全日程のうち,平成27年9月25日のみに最大で約250MWの電力不足が発生することが分かった。これは,直前までの風速予測が低い値を示し,急激な風速の上昇が観測されたためである。これ以外の日のデータでは,周波数変動が許容範囲内であり,電力を平滑化できる可能性を示した。 また,揚水発電による電力安定化と上池水位の適正化モデルを提案し数値シミュレーションを行った。結果として,調整しなかった場合は約130MWの出力不足であったが,提案モデルを適用することで約70MWの出力不足に改善でき,貯水率も21.5%改善できることを明らかにした。 新たに提案した統計モデル法を用いることで,アルキメデスポンプを用いた揚水発電による大規模風力発電の電力安定化の数値シミュレーションを行った。その結果,統計モデル法を適用することで,ウインドファーム出力の過不足をそれぞれ約38%,約49%改善することができた。
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