85kHz帯の電気自動車用無線電力伝送システムに対し、ソレノイドコイルあるいは円形スパイラルシステムを考え、成人女性および妊娠女性を考え、体内誘導電解の比較を行った。その結果、胎児における体内誘導電界は、母親のものよりも小さいこと、さらに成人女性と妊娠女性における体内誘導電界は大きな差がないことなどが分かった。これらの知見は、おおむね体内を通過する磁束で決定づけられることも示した。得られた知見は、コイルの形状には依存しないことも分かった。このことから、人体が存在する領域を通過する磁束を軽減することにより、人体に誘導される電界を低減できることが分かった。 6.78MHz帯の情報端末用無線電力伝送システムからの漏れ磁界に対し、高調波の影響を考慮に入れた評価法を開発した。試作機による実測値により、高調波の影響は30%程度であること、高々1,2点の実測値から安全性評価が可能であることなどが分かった。この結果、あらかじめ計算機により「結合係数」と呼ばれる外部磁界と体内誘導電界の関係づけを行う係数を導出しておけば、簡易な測定で安全側の評価が行えることを示した。特に、この知見が10MHz以下の周波数でおおむね有用であることを実験的に確認した。この結果をInternational Electrotechnical CommissionにおけるExpert会議にて紹介し、国際標準化に貢献した。なお、2015年度に答申された総務省指針においてもその根拠となるデータとして引用された。 以上のように、準静近似の適用領域の検討と簡易評価法、ヒトへの体内誘導量を軽減した無線エネルギー伝送システムの設計指針に関し、重要な知見を得ることができ、国内答申さらには国際標準化に貢献し、当初の目標を達成した。
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