研究課題/領域番号 |
25420253
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
植田 浩史 大阪大学, 核物理研究センター, 特任助教(常勤) (10367039)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高温超伝導 / 遮へい電流 / 細線化 |
研究概要 |
近年,高温超伝導技術を応用して医療用加速器やMRI,NMRなどの設計・開発が進められている。REBCO線材はテープ形状をしているため,垂直磁場の影響を大きく受け,遮蔽電流が顕著に誘導され、それによって不整磁場が発生する。この不整磁場により発生磁場の空間的均一性や時間的安定性を損なう可能性があるため、この不正磁場の磁場分布を測定・評価してきた。本年度は,REBCO超伝導コイルの遮蔽電流により発生する不整磁場を低減することを目的に,細線化と負荷率に焦点を当て,三次元電磁場解析により評価を行った。ある中心磁場を発生するコイルを構成するパンケーキコイルのスタック数を変化させた場合について、遮蔽電流による不整磁場を解析により評価した。これは、コイルのアスペクト比を変化させるで、コイルの通電電流の負荷率を変化させていることに相当する。さらに,線材を分割し細線化したときの遮蔽電流による不整磁場変化についても評価した。解析によって得られた線材内の電流分布から、コイルのスタック数が少ないと(負荷率が上がると),端のコイルにおいて,線材内の電流は通電電流が流れる領域が多くなり、遮蔽電流が流れる余地が少なくなり、遮蔽電流磁場が小さくなることが明らかとなった。この結果は遮蔽電流の抑制対策を磁場分布に応じて施すことが有効となる可能性を示唆している。また,細線化することによって遮蔽電流磁場が抑制される。細線化することによって,細線一本あたりに流れる遮蔽電流が抑制されるためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目は、コイル内の遮へい電流・磁場解析のモデル化と定式化を行う予定であったが、当初の目的を達成した。さらに、新たに高温超伝導コイルの不整磁場評価用の電磁場数値計算コードを開発し、コイル通電電流や細線化の影響も評価した。
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今後の研究の推進方策 |
遮へい電流の問題は、低温超伝導線材では、フィラメント化やツイスト、転位によって抑制することが可能である。一方、イットリウム系線材は、その作製方法(基板上に超伝導層を蒸着)のため性能を低下させないで長尺に亘る加工(フィラメント化など)をすることが難しく、テープ形状であるためツイストも難しい。前年度は、遮蔽電流の抑制対策を磁場分布に応じて施すことが有効となる可能性や細線化による遮へい電流磁場の抑制について成果が得られた。そこで、これらの成果を踏まえ、コイル化する際の巻線法や通電パターンによる磁化の変化などで線材内の遮へい電流分布を抑制する方法を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では、ハイパフォーマンスコンピュータを購入する予定であった。しかしながら、新たに開発する高温超伝導コイルの不整磁場評価用の電磁場数値計算手法から要求される計算機の性能の見直しを行い、来年度に購入することとした。 高温超伝導コイルの不整磁場評価用の電磁場数値計算手法を新たに開発し、ハイパフォーマンスコンピュータを購入する。また、研究成果を国内外にて発表する。
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