研究課題
高温超伝導線材は高磁場中でも優れた超伝導性を示し、機械的特性や熱的安定性にも優れているため、NMRやMRI、加速器用マグネットへの適用が期待されている。このような応用では発生磁場は空間的・時間的に極めての高い均一度が要求される。しかし、高温超伝導マグネットで高精度磁場を実現する際、遮へい電流により誘導される磁場が発生磁場の空間的均一性や時間的安定性を損なうことが最大の問題となっている。今年度は、昨年度実施した細線化による遮蔽電流磁場の抑制について、具体的にコイルに適用することで、定量的に評価した。また、NMR・MRIや加速器のような応用機器ではマルチコイル構造で製作される。このようなマルチコイルにおいては,コイルを励磁する際,各コイルでの発生磁場が相互に影響し合い、遮蔽電流がより複雑に誘導されてしまう。そのため,様々な動作状況での遮蔽電流の振舞いを昨年度までに開発した遮蔽電流磁場の3次元電磁場解析プログラムを用いて調査した。また、研究成果を国内外の学会にて発表した。
2: おおむね順調に進展している
当初予定では、連携研究者である石山教授(早稲田大学)で製作された高温超伝導コイルを例として、コイルの発生磁場を通電パターンなどの条件を種々変えて精密測定した結果と、本研究で開発した遮蔽電流磁場の3次元電磁場解析プログラムで計算した遮蔽電流の影響を比較することになっていたが、本年度までに目標を達成している。
低温超伝導コイルでは、遮蔽電流の抑制策として通電電流をオーバシュートさせる方法が用いられる。そこで、今後は、高温超伝導コイルにおいて。特に実機を想定したコイル構成(マルチコイル構造)を想定して、通電電流のオーバシュートによる遮蔽電流の抑制について検証する。また、最終年度にあたり、これまでの成果をまとめ、NMR/MRI用超伝導マグネットあるいは加速器用マグネットのような高磁場・高精度磁場を指向した高温超伝導マグネット設計に対して遮蔽電流の影響を抑制するための指針を示す。
当初予定では、研究進捗と解析対象の複雑化に合わせて、並列コンピューティングで計算時間の短時間化を図り、さらなる高速化を達成するため、GPUコンピューティングプロセッサを購入する予定であった。今年度の研究範囲では並列コンピューティングプロセッサを使用しなくても目標を達成できたため購入を見送り、次年度の実機モデルの解析のため、並列コンピューティングプロセッサを購入することとした。
実機モデルの解析のため、並列コンピューティングプロセッサを購入する。また、研究成果を国内外にて発表する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 1件)
IEEE Transanctions on Applied Superconductivity
巻: 25 ページ: 4700705
10.1109/TASC.2014.2371133
巻: 25 ページ: 6603205
10.1109/TASC.2014.2375953