研究課題/領域番号 |
25420255
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
竹野 裕正 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90216929)
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研究分担者 |
中本 聡 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助手 (10198260)
八坂 保能 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30109037)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 直接発電 / カスプ型直接エネルギー変換 / 高周波動重力 |
研究実績の概要 |
昨年度から行っている,既設のメッシュ電極を放射アンテナとして代用する高周波印加実験について,追加実験を行って解析を進めた.電圧-電流特性の計測の電圧掃引中,特異な変化が現れる現象は,印加磁場条件に対して非常に敏感であり,ごく狭い範囲の磁場条件下で発生する.また,磁場設定直後以降,観測中に現象が変化するが,何度もの実験に対して極めて再現性良く生じることも確認された.現象の説明を検討したが,十分なものは得られていない. 高周波の効果を確認するために,この特異な変化の現象を避ける条件で電圧-電流特性を精密に評価した.カスプ磁場が形成されない条件で,小さいながらも高周波印加の効果が確認されたが,これは動重力効果による説明と矛盾しない.これらの結果は,国際会議PLASMA2014で発表した. 磁場平行方向の電界が必要と判断し,カスプ磁場形成時に十分な効果を得られるように,電界形成方法を見直した.カスプ磁場における磁力線の主方向は径方向であり,この方向の電界形成には,径方向に複数の電極を並べて静電的に励起することが考えられる.傾斜カスプ磁場の磁力線方向に沿うよう,二つの電極の大きさと配置を設計し,新高周波電極として設置した.電極への高周波供給系についても,二つの電極に適当な位相差を設定できるよう,整備を行った. 二つの電極間位相差を同相と逆相にした場合の,ラインカスプ配置(電子捕集)電極の電子電流を観測した.いずれの条件でも,高周波の印加に応じて電子電流は変化するが,同相では増大,逆相では減少した.これらの変化は,電極印加電圧の増大に対して相関があることを確認した.この現象は研究の目的である高周波による粒子分離の端緒と考えられ,実際の分離の評価や密度依存性などを,次年度に追及する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
計画の遅れは,初年度以来の既設実験設備の故障が大きな原因である. 初年度に,重要な設備である既設の高周波電源とターボ分子ポンプとに故障が発生した.経費と対応のための時間的な計画とについて,大幅な変更を余儀なくされ,2年度もその影響が続いた.さらに2年度の初めに,他のターボ分子ポンプと磁場コイル励磁用の直流電源に故障が発生した.ターボ分子ポンプは修理できたが,直流電源は入手不可能な出力電流制御用トランジスタの破損が原因と考えられ,直流電源自体を更新せざるを得なかった.これらについても対応のための時間損失があった.また,秋にも,他の高周波電源にトラブルが発生したが,こちらは簡単な修理でおさまった. 種々のトラブルに応じて目的達成を考えた計画変更を行っている.そのため,申請当初と具体的な実験計画が変わってきており,直接の進度評価が難しいが,研究全体としての目標を考えると,遅れていると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
前年度も状況報告したように,機材トラブルとそれに伴う計画の遅れに応じて,実験内容をより本質的なものに絞って進めている. 高周波印加の効果そのものについては,2年度に発案・製作した新高周波電極を用いた実験を進める.条件依存性を調べる実験の結果を通じて,効果の物理的な解析を進める一方,実機レベルに必要とされる条件を見積る.条件依存性の中で重要なプラズマ密度依存性については,概ね準備が整っている高密度プラズマ入射実験機構で,その効果を調べる.想定外の事態の発生も起こり得るが,現象の本質を見極めて,研究期間内に得られたものを知見としてとりまとめる. 結果の解釈や実機への展望の裏付けともなる粒子軌道計算については,これまで主として担当してきた八坂が職を定年となり,研究分担者としての継続ができなくなった.次年度は,従来からも一部を担当してきた研究代表者の竹野が全てを引継いで進める.具体的には,動重力効果を導入した粒子軌道計算である.
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの達成度で説明したように,予算計画変更の大きな原因は,既設設備の故障に伴う修理および設備更新等に経費が発生したことによる.初年度に,以降の設備故障発生の可能性に備えて予算使用の抑制を行い,2年度使用額が発生していた.設備故障は2年度も複数件発生したが,この繰越使用額により対応できた.2年度の予算使用においても,同程度の準備を行ったために,最終年度での使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
2年度の実績と同様に,次年度も機器の故障が生じた場合に充当する.特に問題が生じなかった場合は,計画推進の加速を考え,作業手数を減らせるような機材の購入等に使用する.
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