研究課題/領域番号 |
25420256
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
平木 英治 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (20284268)
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研究分担者 |
田中 俊彦 山口大学, 理工学研究科, 教授 (00179772)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 双方向スイッチ型1ステージAC-AC電力変換回路 / 高周波リンクDC-DCコンバータ / トランス損失 / 温度計測 |
研究実績の概要 |
大きく分けて二点の成果を得ることができた。 (1)高周波トランスの損失計測 前年度の実績より,機械式立体駐車場におけるEV&PHV非接触給電システムの開発において,その根幹となる新提案の1ステージAC-AC電力変換回路の実用化には,電力変換効率が不可欠であることが判明した(電力変換効率85.7%)。その損失の内訳を掌握すべく,非接触トランスで発生する電力損失の計測を試みた。その結果,電圧センサおよび高周波カレントプローブによって計測した電圧電流波形に基づく損失計算では整合的な数値を得ることは極めて難しいことが解った。そこで,一旦回路動作を単純化すべく,1ステージAC-AC電力変換回路を高周波リンク絶縁型DC-DCコンバータに置き換え,トランスの電圧・電流波形から損失を求めるのではなく,トランスの発熱量から発生損失を計測する手法を検討した。その結果,実動作と整合的な損失値を算出することが可能となった。本実施報告書の「13.研究発表」への記載には間に合わなかったが,この成果を学会発表すべく現在準備しているところである。 (2)高周波トランス最適巻き線形状 前年度の実績でJMAGソフトウエアを使用した高周波トランス巻き線の最適形状を明らかにしたが,その物理的意味について考察を行い,漏れ磁束の発生による相互インダクタンスの低減具合が巻き線形状の差による磁路の違いによって説明できることが解った。現状ではまだより詳細な検討を加えることで学術発表ができるレベルに到達できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
システム全体の評価を行う過程で,トランス損失の低減が問題となってきた。しかしながら本システムのトランスが扱う特異な高周波交流を直接計測することでトランス損失を計測することが非常に難しいことが判明した。そこで,当初予定にはなかったが,トランス損失の明確化をすることを優先した。すなわち,より単純な動作をする高周波リンク(絶縁型)DC-DCコンバータ構造に立ち返り,トランス損失に伴う発熱状態からトランス損失を計測する手法を検討・実施し,これまでの計測手法では極めて難しかった高周波トランスの損失を計測することができた。判断区分は「(3)やや遅れている。」と回答してはいるが,新たな知見という意味では十分な進捗であるとも考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
トランス動作が提案回路と比較して単純な高周波リンク(絶縁型)DC-DCコンバータトランス損失を計測する手法をある程度見極めることができたので,次のステップとして本研究の対象である1ステージAC-AC電力変換回路のトランス損失評価へ結びつけ,最適トランス構造の明確化の指針とする。低電力変換効率となっている原因をトランスコア(鉄損)あるいは巻き線(銅損)のどちらが支配的であるかを突き止め,より高効率なシステム構築を検討し,実機評価を行う。 さらに,本提案システムを実用化するには三相システム化が必須である。単相回路で動作する現状のシステムを効果的に三相化するための手法を検討する。 以上の方策を実施することで,「機械式立体駐車場におけるEV&PHV非接触給電システムの開発」に大きな成果を得ることができるはずである。
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次年度使用額が生じた理由 |
以下の二点が大きな理由である。 ・提案回路と従来回路の試作比較を実施する初期計画であったが,そこまで到達しなかった。 ・提案回路の損失の50%近くを占める高周波トランスの損失詳細計測にむけた取り組みを新たに実施した。
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次年度使用額の使用計画 |
単相電力をあつかう本提案回路を三相電力系統に接続する際に問題となるであろうアンバランス問題を解決するための手法検討を実施するため,H27年度の助成金のうち15万円をパワー半導体購入費として計上している。円安基調のおり価格上昇気味であるので,その補填として役立たせる予定である。
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