本研究では、診断・治療機能を有する次世代型カプセル内視鏡の要となるマイクロ磁気アクチュエータの開発を目的とし、具体的な診断・治療機能として、「検査のための細胞診ブラシの擦過」と「治療のための薬剤散布」の各機能をカプセル内視鏡に付与することを目指した。 本研究の最終年度の平成27年度は、はじめに、前年度までに開発したマイクロ磁気アクチュエータと3次元磁界発生システムを用い、複数機能の組み合わせと個別駆動の手法について検討を行った。実施した条件は、細胞診機能に対しカプセル回転による自走機能とアンカー機能の付加、及び、薬剤散布機能に対しアンカー機能の付加である。複数機能の個別駆動の手法には、直流磁界の印加方向や交流磁界の方向と周波数、回転磁界の回転面の差を利用する手法等を検討した。その結果、細胞診機能では直流磁界と交流磁界の印加方向の制御、薬剤散布機能では回転磁界の回転面の差を利用する制御において良好な結果が得られた。 続いて、シリコーンゴム製の模擬小腸や、ウシとブタの小腸に対し、500Paの水圧を印加することで実際の小腸に近い環境を構築し、前述の各機能が動作できる条件を調べた。水圧を印加することで小腸内壁とカプセルとの摩擦力が大幅に増大し動作に不具合が生じる場合もあったが、磁石サイズやカプセル表面形状、アンカーの強度を見直すことで、ほぼすべての機能を実現することを確認した。 以上の結果を研究協力者の外科医と議論し、各機能が次世代型カプセル内視鏡として期待できることを確認した。今後、X線や内蔵センサ等でカプセルが体内でどの場所でどのような姿勢にあるかがわかれば、動物実験に移行できるとの結論に達した。
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