研究課題/領域番号 |
25420264
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
乾 義尚 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (70168425)
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研究分担者 |
池之上 卓己 滋賀県立大学, 工学部, 助教 (00633538)
田中 正志 茨城大学, 工学部, 助教 (40583985)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リチウムイオン二次電池 / 劣化評価 / 寿命推定 / 交流インピーダンス特性 / 起電力 |
研究概要 |
リチウムイオン二次電池の劣化現象の解析・診断技術に関しては,メーカーサイドでは,劣化しにくい電池の開発を目的として,劣化後の電池の解体検査が広く行われており,ユーザーサイドでは,劣化電池を使いこなすことを目的として,非破壊的な手法による劣化評価が主に行われている.これらのうち,電池の劣化現象を非破壊検査により把握する手法としては,定電流放電により得られる放電容量の減少として定量的に評価することが従来から一般的に行われてきた.しかし,劣化電池を使いこなすためには,電池の簡便な劣化度診断手法の開発とその結果を用いた劣化電池の詳細な動作特性のシミュレーション技術の確立が必要不可欠であることを考慮すると,この従来からの定電流放電容量のデータを用いるだけでは,明らかに情報量が不足しており,劣化電池を使いこなすという目的を達成することは不可能であると考えられる. 上述の背景を考慮して,本研究では,リチウムイオン二次電池の劣化にともなう交流インピーダンス特性と起電力の変化を詳細に測定し,それらを電池劣化の定量評価指標として用いる,新しい電池劣化プロセス評価手法を提案する予定である. リチウムイオン二次電池の劣化に関する研究を行うためには,劣化の過程が既知で劣化レベルの異なる多数の劣化電池サンプルが必要不可欠である.しかし,劣化の過程がコントロールされた劣化電池は簡単には手に入らない.そこで,本研究では,平成25年度の1年間をかけて,リチウムイオン二次電池の劣化試験を行い,上記の検討・提案を行うために必要となるサイクル劣化および保存劣化試験により劣化したリチウムイオン二次電池サンプルを作成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究課題は,「サイクル劣化および保存劣化試験による劣化したリチウムイオン二次電池サンプルの作成」であり,当初予定は下記の通りであった. まず,「① 劣化レベルの異なる多数のサイクル劣化したリチウムイオン二次電池サンプルの作成」を行う.その実施計画は以下の通りである.電池は充放電の繰り返しにより劣化するので,電池に温度,充放電電流波形および充放電回数等の条件を種々変化させたサイクル負荷を加え,多数のサイクル劣化電池のサンプルを作成する. 引き続き,「② 劣化レベルの異なる多数の保存劣化したリチウムイオン二次電池サンプルの作成」を行う.その実施計画は以下の通りである.電池は充放電を行わない保存状態でも時間の経過とともに劣化するので,電池を温度,充電状態および保存期間を種々変化させた条件下で保存し,多数の保存劣化電池のサンプルを作成する. 上記のうち,①については,既に完了しており,さらに劣化電池の特性測定も一部実施することができたので,研究は当初予定以上に進展した.一方,②については,平成25年度中にほぼ完了したが,終了が当初予定より1ヶ月程度遅れる見込みとなっている.しかし,この遅れは軽微であるので,研究はおおむね順調に進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
研究は,今後も当初計画通り遂行していく予定である. 平成26年度は,「電池の実際の劣化プロセスに対して適用可能な非破壊の詳細な劣化モード解析手法の開発」を行う.まず,「① 劣化したリチウムイオン二次電池サンプルの交流インピーダンス特性と起電力の測定」を行う.具体的には,前年度に作成したサイクルおよび保存劣化したリチウムイオン二次電池サンプルの交流インピーダンス特性と起電力を測定により求める.引き続き,「② 交流インピーダンス特性と起電力の測定に基づく非破壊の劣化モード解析手法の開発」を行う.具体的には,①の測定結果を詳細に解析することにより,劣化因子が異なる電池の劣化度を,質的に異なる劣化モードに定量的に分離して評価することが可能な,非破壊の劣化モード解析手法を開発する.この劣化モード解析により,各劣化因子と各劣化モードの相関関係が明らかになり,劣化因子が多数関わる実際の劣化プロセスの詳細な劣化評価が可能となる. 平成27年度は,「電池の高精度な劣化評価と寿命推定をより簡便な測定により行うことができる手法の確立」を行う.まず,「① より簡便にリチウムイオン二次電池の劣化状態の推定が可能な試験手法と条件の考案」を行う.交流インピーダンス特性と開放電圧には大量の情報が含まれているが,実際の運用状態の電池でそれらを詳細に測定するのは困難である.そこで,前年度の研究の知見をうまく利用して,より簡便に電池の劣化状態の推定が可能な試験手法を考案する.引き続き,「② 劣化状態の推定結果に基づいて電池の高精度な劣化評価と寿命推定を行う手法の確立」を行い,本研究の目標を達成し,研究を終了する.具体的には,①で考案したより簡便な試験手法による劣化状態の推定結果に基づいて,リチウムイオン二次電池の高精度な劣化評価と寿命推定をより簡便な測定で行うことができる手法を確立する.
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次年度の研究費の使用計画 |
学会の日程の重複等の理由で,当初に出席を予定していた研究調査や成果発表のための学会の一部に出席できなかったため,旅費の支出が少なくなり,12万円程度の残額が発生した. 本研究の研究期間である今後2年間の旅費に関しては,十分な金額を当初から計上してあるので,本残額は次年度以降の消耗品の購入資金に充て有効に活用する予定である.
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