研究課題/領域番号 |
25420266
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
伊庭 健二 明星大学, 理工学部, 教授 (40369955)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スマートコミュニティ / 再生可能エネルギー / 風力発電 / 送電線計画 / 出力変動平滑化 / 地域環境保全 |
研究概要 |
スマートグリッドと既存電力系統網間の系統運用協調に関して、諸外国の実証試験の進捗などを参考に、インターオペラビリティの高いシステム構築の要件を検討した。技術的な共通課題としては再生可能エネルギーの変動抑制技術と需要家側の需要調整技術の向上が不可欠である。そこで、本研究の初年度では大別して以下の2つの研究を進めた。 実測データを用いた風力発電の出力変動の統計的分析:風力発電が全国大に普及した場合その出力変動幅を把握する必要がある。本研究では日本全国にバランスよく位置している6つの風力発電所で2年間にわたり1秒間隔で記録されたデータを用いて統計的分析を行った。これらの発電所の出力を積算するとならし効果が得られ、短時間評価で変動の標準偏差が概して半分に減じることがわかった。一方、季節的な発電分布には全国的に傾向が一致し、需給逼迫を起こしやすい夏季には出力が大幅に減じることも統計的に把握できた。各ウインドファーム内点在する15-25基程度の風車についても、個々の出力データを用いて分析した。位置関係と風向を考慮して顕著な相関があれば出力の短期予測が可能になるが、残念ながら期待したような相関は見られなかった。一方、地域的・時間的な出力傾向(わゆる山風・谷風)が見られるケースを発見した。これらの成果は論文にまとめ発表した。 風力発電所を結ぶ送電線計画手法の研究:広大な大地に点々と建設される風力発電の電力を輸送する送電網の建設計画については、面的に広範囲に広がる密度の小さな電源を束ね、既存変電所まで輸送する必要がある。さらに経路だけでなく輸送する電力に応じて送電線種を選択する必要があるため、最小コスト問題も複雑になり、分岐線路数が多すぎる分岐点も望ましくないなど、実務上の制約も多く含まれる。本研究ではプリム法を活用した新たな送電網計画を開発し論文にまとめ発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
風力発電と既存系統の協調に関しては、詳細なデータを分析することで、順調な成果が得られた。地道な研究であるが実測データに基づく詳細な分析はこれまで少なかったので、電気学会全国大会における発表の場においても実業界からも関心を持たれたことは有意義であった。また、送電線計画においても北海道で特定目的会社(SPC)が設立されるなどの社会的ニーズに基づく価値あるテーマを先行して進めることができた。この成果は米国での論文発表にまとめることができた。 一方、スマートグリッドと既存電力系統網間の系統運用協調に関しては現在でも制御主体者が不在のまま議論が進まず、スマートグリッドと既存の電力会社がどのように共存すべきかの研究は停滞している。この問題は現在進行中の電力システム改革によって進展が図れると期待され、具体的な制度設計の過程に注視しながら研究を選択し遂行していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
風力発電の出力変動対策と風力電源を結ぶ送電網の拡充計画の研究は引き続き継続したい。膨大な記録情報の処理を行う際には誤計測などのバッドデータ処理も数理的に適切に処理することも行いたい。また、需要家の需要予測手法も引き続き進め、需要種別毎に重回帰分析と平均法を組み合わせた手法をさらに進め、ガソリンスタンドの需要予測から、その他一般の需要予測手法に拡張し一般化したい。電力システム改革の進展によって制度設計の方向性が明らかになれば、インターオペラビリティの高いシステム構築に向けて顕在化する多くの課題についての取り組みも開始したい。最近のスマートグリッド構想は地域環境・地域経済向上のための地方自治体の取り組みにも取り入れられ、単純な経済原理だけでない価値も評価されつつあるので、東南アジアや国内島嶼でのスマートコミュニティの構築も視野に入れて研究を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
A4コピー用紙が当初見積価格より若干安価で購入できたので、少額の次年度使用額が生じました。 次年度予算に組み込み適切に使用する計画です。
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