本研究の最終年度である平成27年度は、風力発電所出力の地域的特性の実績データ分析と、大きな出力変動を意味する「ランプ応答」の定量的な定義と検出方法についての研究を進めた。前者の地域特性分析において、風車が風下に入ることによる出力低下(ウェイクロス)が海岸線に立つ風車に顕著な影響が見られるものの、尾根筋に立つ風車にはほとんど影響が見られず、風車間の出力相関も極めて弱く、出力予測をする際には風車毎にする必要があることを明確にした。またランプ応答は系統運用者に怖れられる現象であるが、これまで明確な定義がないまま議論されていたことを問題視し、いくつかの定量的な定義とその検出を比較した。未だに人の目測(感覚)による検出との乖離はあるが、定義付けの重要生は明らかにできた。 3年間の研究期間全体を通じての成果としては、国内に点在する6箇所の風力発電所(WF)の全国的なならし効果の評価や、WF内外の出力相関の分析、蓄電池運用の変動抑制効果と充放電効率の実績評価をすることができた。この種の分析結果は風力発電事業者は内部情報として把握しているが、原価情報の開示にもつながるので一般には公開されない。系統運用に携わる電力会社も地域情報は知ることができるものの、全国大の把握は十分されてこなかった。本研究は実績データを忠実に統計分析した内容が中心になるため新規性は乏しいものの、分析結果は系統運用に携わる実務者には有益なものになったと自負している。 研究の成果は間接的な論文も含めて国内外の15編の論文(電気学会全国大会、研究会、ICEE)にまとめ発表した。研究実施計画に記載した既存系統の連系協調と相互運用性については、動的な解析までは検討できなかったが、系統運用上の問題や蓄電池運用の課題抽出まで進めることができた。今後はデマンドレスポンスの有効性を考慮した相互運用性の研究につなげたい。
|