研究課題/領域番号 |
25420273
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
喜屋武 毅 近畿大学, 工学部, 准教授 (40381016)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超臨界流体 / 絶縁破壊 / パルスパワー / 電気エネルギー変換 |
研究実績の概要 |
近年,二酸化炭素の超臨界状態まで加圧された流体での高電圧直流電圧やパルス電圧の印加による放電基礎特性の研究は盛んにされており,その背景には,超臨界流体中での放電特性はもとより,超臨界流体と放電プラズマを融合した反応プロセスや材料合成が期待されている。本研究では,超臨界流体中での放電特性を別の視点からとらえ,短絡型スイッチ流体スイッチやコンデンサとしての機能性を調査することである。
これまでに蓄積された特性をもとに,超臨界二酸化炭素の短絡試験において,誘電性の回復特性,絶縁破壊後の相変化(密度変化)の影響を評価した。併せて,超臨界窒素の破壊特性の調査やレーザー可視化法による絶縁破壊後の調査を実施している。また,超臨界流体中での放電プラズマの反応過程への影響について,超臨界アルゴン雰囲気に試料を添加し,調査中である。
設計・製作された超臨界プラズマ生成装置において,気圧調整された二酸化炭素の三状態をそれぞれ,臨界圧未満の液体状態(SLS),臨界圧以上に加圧された液体状態(LHCP)ならびに超臨界状態(SC)のとして,誘電性の回復特性を調査した。LHCPやSC状態では,80%破壊電圧の回復特性評価に対して,10kHzの繰返しが動作可能.一方で,SLS状態では,同じ周波数で61%と低調である。短絡後の誘電性回復特性は,二酸化炭素のLHCPやSC状態で同様な特性を示し,相の密度変化が回復特性に影響すると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度の研究目標は,超臨界流体中での放電プラズマの電気特性・誘電特性を解析し,放電容器を含めたパルス電源回路の最適パラメータを調査することである。具体的には,高速充電器として,高繰り返しパルス電源を製作し,短絡型プラズマスイッチを備えたパルス電源システムを構成することで,短絡型プラズマスイッチの媒質として二酸化炭素と窒素を選定し,超臨界状態を含む高加圧液体の短絡試験を実施することである。
これまでの達成状況は,高速・高繰り返しパルス充電器を製作し,出力波高値50kVで,高速パルス充電部の制御プログラムは組込みシステムを採用しているため, 単パルスあたり1Jの出力エネルギーに対して,トリガー間隔を可変にでき,最大繰返し周波数500ppsまで設定できる。また,超臨界状態を含む様々な状態における二酸化炭素の誘電性の回復特性や回復過程の相変化の影響等の調査を実施した。絶縁破壊後の媒質の状態は初期条件に依存し,相変化が断熱条件を想定すると,臨界圧未満の液体状態では,(泡)ガス状態を形成し,臨界圧以上に加圧された液体状態ならびに超臨界状態では,パルス・エネルギーは蒸気状態への相変移を介さず,密度変化をもたらす潜熱として消費されると考えられる。泡鼓動理論によれば,潜熱による泡拡張,泡内部圧力の再圧縮・拡張,衝撃波生成の行程を数回繰り返すと考えられ,拡張縮小サイクルおよびそれに伴う衝撃波は泡エネルギーを消費する。また,窒素の超臨界状態を含む破壊特性や電界強度,回復特性は鋭意調査中である。当初予定より若干遅れはあるものの,概ね順調に成果があがりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
27年度の研究計画は,前年度に引き続き,放電特性評価と超臨界プラズマの制御・生成に関しては,超臨界状態を含む窒素の誘電特性評価と超臨界流体中で生成される放電プラズマのプラズマ診断を分光計測やレーザー計測で行い,絶縁破壊時の放電形成における熱エネルギー授受の形態(回転温度,振動温度等)の調査と,レーザー可視化法による超臨界状態を含む窒素の破壊前駆現象や絶縁破壊後の観測を行う。また,短絡型プラズマスイッチを備えたパルス電源システムに関しては,実際に,水中放電等への適用を実施する。さらに,一般的な超臨界流体を用いた化学反応等では,触媒の利用による反応も少なくなくない。環境負荷の少ない物質変換プロセスの検討として,超臨界流体中での非熱平衡プラズマの生成・制御によるラジカル反応を触媒の代用にする材料合成や反応場の創成が研究されているが,まだまだ検討の余地がある。これまでの手法と併せて,超臨界流体中での熱平衡プラズマによる化学反応や材料合成に関して,超臨界アルゴンを雰囲気流体として,反応プロセスへの熱平衡プラズマの影響も継続的に調査する。最終年度でもあるので,これまでの蓄積されたデータを国内外で積極的に公開し,本研究のまとめとする。
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