本研究では,電力変換器の出力電圧に有効に零相電圧を重畳し,零相電圧の周波数成分を変化させて低ノイズ化(電磁障害の低減化)を実現しようとするものである。最終年度までに,モータ駆動時に着目した零相電圧加算量の最適化手法を提案し,回路シミュレータを用いた評価により,漏洩電流の振幅を約3割低減できることをシミュレーションおよび実験によって確認した。さらに,学会発表等を実施した。 最終年度の27年度では,電磁障害低減を対象とした零相電圧活用技術を応用展開し,環境負荷軽減を目的とした(1)素子損失とキャリア騒音を同時に低減可能な方式,および,(2)素子発熱集中を緩和する方式に関する基礎評価を実施した。(1)のキャリア騒音低減法では,零相電圧としてランダム電圧の指令を与えることにより,電流リプルの周波数を分散させ,キャリア騒音の低減を図る点が特徴である。コンデンサマイクを使用し,出力電圧を相対比較することによりキャリア騒音を評価した。この結果,従来法では,キャリア周波数とその高調波の成分がキャリア騒音に含まれ,特に,2次高調波成分の音が大きくなるのに対して,提案法では周波数成分が分散し,ピーク値が約7db程度減少することを確認した。さらに,(2)の永久磁石モータの極低速運転時における素子発熱集中の緩和法では,新幹線等で採用されている3レベルインバータ方式において,零相電圧を変動させて与える。これにより,スイッチング素子に流れる電流の導通経路を切り替えることができ,特定の素子に集中する発熱を分散できる可能性を見出した。 いずれの方式も,既存形態に対して,零相電圧を有効活用して電力変換器の高機能化を図るものであり,制御演算処理(ソフトによる処理)のみで対応可能な点が特徴である。
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