パルスパワー領域の高電圧極短パルス,通常領域の低電圧長パルス,これらの組み合わせパルスを出力できるパルスシステムを製作し対象生物に対する実験をおこなった。 メダカ(Oryzias latipes)受精卵への実験では,極短パルス(3.2 kV,100 ns)1発と両極性低電圧長パルス(±約8 V,300 us)を交互に複数発とした非対称バーストパルス群を用いて,GFP(Green Fluorescent Protein)の導入を試みた。極短パルスのみ,バーストパルスを極短パルスの100 ms秒前のみ,100 ms後のみ,前後共に印加するという4パルス条件でGFP発現の有無を調査した。バーストパルスを前後共に印加したとき,受精卵4.2%でGFP発現に起因したと考えられる緑色発光が確認できた。極短パルス15,50,100 nsにバーストパルスを前後共に印加した場合,極短パルス50 nsのときに緑色発光の割合が12.5%と最大となった。後方バーストパルス群として,正負パルス交互100発とした場合と,正極パルス100発後に続いて負極パルス100発を印加した場合で,緑色発光の割合が前者4.2%であるのに対し後者12.5%と3倍高くなった。これらより後方バーストパルスと極短パルスはGFP導入に重要な役割を担っていることが分かった。 ラット受精卵へのmRNA導入実験を行ったところ,メダカ受精卵で良い結果が得られたパルス条件(正負交互バーストパルス群+極短パルス+正極バーストパルス群後に負極バーストパルス群を印加)のとき33%で変異が確認できた。 線虫(C. elegans)に対し,幅広い電気パルス(ns~ms)印加による孵化率の変化を調査した。パルス幅が短くなるほど低い導入エネルギーで孵化率の低下が見られた。長いパルス幅で孵化率の低下が見られるパルス条件では破裂した卵が多く見られた。
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