研究課題/領域番号 |
25420278
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研究機関 | 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基 |
研究代表者 |
荒 隆裕 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基, その他部局等, 教授 (40648896)
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研究分担者 |
山本 修 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基, その他部局等, 教授 (00648925)
田中 晃 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基, その他部局等, 准教授 (30648952)
平原 英明 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基, その他部局等, 助教 (50649209)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 電気機器 |
研究実績の概要 |
当初より予定していた大型機に多用される塊状磁極形の同期機に対する特性算定試験法に関する研究を行った。具体的には、抵抗と漏れインダクタンスの直列回路を2つ並列に接続した制動巻線二回路モデルによって直軸および横軸の制動巻線部分の周波数依存性を表現することで、実測値とほぼ一致する始動特性(トルク―滑り特性、電流ー滑り特性)や滑り全域の演算子インピーダンスを算出可能な等価回路定数を決定できることを定量的に実証できた。 また、各滑り周波数に対する演算子インピーダンスの周波数特性を描いたグラフに補助線を作図することによって同期機諸定数を求める手法を検討した。この手法は従来より知られているものであるが、作業者によって作図結果にばらつきが生じやすく、熟練の経験が必要とされていた。本研究では、この作図手法を理論的側面から解析し、作図結果にばらつきが生じやすかった諸定数(直軸開路過渡時定数、直軸開路初期過渡時定数、横軸開路初期過渡時定数、直軸短絡過渡時定数、直軸短絡初期過渡時定数、横軸短絡初期過渡時定数)の補助線作図において、演算子インピーダンスの虚部が極小になる点の滑り周波数のポイントを利用することによって、作業者によらず一義的な作図が行える方法を提案した。過渡時定数と初期過渡時定数の差が小さい同期機において、周波数特性に平坦部が現れず直軸過渡リアクタンスを求める作図を行えなくなる問題に関しては、直軸開路過渡時定数を利用した新たな作図法を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
やや遅れている部分もあるが、当初計画以上に進展した部分も多い。全体としては概ね順調に進展している。 やや遅れた部分は、有限要素法による解析に基づくアプローチによって、磁束と周波数の非線形性を有する塊状磁極同期機に対する新特性算定試験法の妥当性の検証を行えなかった事である。アプリケーションソフトウェアの初期導入に手間取ったことが原因であると考えている。 次の事項については、当初計画以上の成果を得ることができた。(1)提案する特性算定試験法をリニアモータに適用する方法について新たな知見を得た。リニアモータの巻線間相互インダクタンスの非対称性を考慮した等価回路モデルパラメータの新しい決定法を見出すとともに、提案する等価回路モデルが従来よりも簡単な式であるにもかかわらず、同等の特性算定精度を有することを実験によって明らかにした。(2)提案する交流電動機の一次漏れインダクタンスの特性算定試験に対しても進展があった。対称機と非対称機の別によらず統一的に一次漏れインダクタンスを求める方法を開発し、非対称回転機やリニアモータに対する実施例に基づいて妥当性を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
有限要素法による塊状磁極同期機に対する新特性算定試験法の妥当性の検証を進める。現在では初期導入を完了し研究できる体制を整えた。今後は塊状磁極同期機の3Dモデル作成を行い、回転試験実測結果との対比によってモデルの精度を高める。提案する新特性算定試験を静止した塊状磁極同期機モデルに対して実施し、本年度実施した実機試験と同様な演算子インピーダンス算出や始動特性計算を行う。試験電流や電圧印加法を変えてシミュレーションを行い、単相交流印加試験との比較、さらには実測運転特性との比較を行う。これらの結果から、提案する新特性算定試験が、塊状磁極同期機が有する回路の非線形性を考慮できる本質をどの程度まで有するのかを明らかにしていく。 大型機に対する特性算定精度の向上の要求の一つに、かご形巻線を有する回転機に対する商用周波数を超える領域の演算子インピーダンスの算出精度向上がある。試験の実施方法の工夫によって信号強度を高める手段を講じて新特性特性算定試験法の算定精度向上に寄与する手法を開発する必要がある。 また、非対称性を有するリニアモータの誘導起電力に大きな位相差が生じることを本年の研究で確認したが、これについて論じた文献は申請者らが知る限り見当たらない。この位相がリニアモータの特性算出結果にどのような影響を及ぼすのかを明らかにする必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議への参加を行えなかったため、旅費分に残額が生じた。一方、リニアモータの非対称性に起因した誘導起電力の位相差の実機検証のため、定常運転特性を行えるリニア模擬機が必要となり購入の検討を進めたが、年度内に機器仕様を確定できず、申請が間に合わなかった。これらの結果として上記の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
(1)リニア模擬機の調達を行い、提案する理論の検証を行う。 (2)商用周波数より高い領域の演算子インピーダンス計測法の改善を検討するために、100kWクラスの容量を有する深溝かご形誘導機を調達し、提案法の実機検証を行う。
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