研究概要 |
平成25年度は、D022型正方晶ホイスラー合金として、Mn3Geを取り上げ、その電子状態及び磁気トンネル接合におけるスピン依存電気伝導の第一原理計算を行った。その結果、Mn3Gaは全対称(Δ1)バンドに関してハーフメタル(フェルミ準位に片方のスピンにのみ状態が存在する物質)ではないため、磁気トンネル接合(MTJ)の強磁性電極材料に用いた場合、Fe/MgO系MTJのようなΔ1バンドのコヒーレント伝導による大きなトンネル磁気抵抗(TMR)効果が得られないが、Mn3GeはMn3Gaよりも1つ価電子が多いためフェルミ準位が高エネルギー側にシフトし、Δ1バンドに関してハーフメタルとなることがわかった。 そのためMgOを有するMTJにおいて、スピン依存電気伝導の第一原理計算を行うと、Mn3GeはMn3Gaと比較して大きなTMR比を示すことがわかった。この結果はMn3Geが高スピン偏極電流源となり得ることを示唆している。 また、D022型Mn3Gaの一部をFe,Co,Niで置換したMn3-xZxGa(Z=Fe,Co,Ni)の電子状態と電気伝導の第一原理計算を行った。その結果、MnをFeで25%程度置換したMn2.5Fe0.5Gaにおいて、Δ1バンドに関してハーフメタルになり、またMgOを有するMTJにおいて10000%以上の大きなTMR比が得られることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は前半に得られたMn3Geに関する結果について、査読付き論文[Y. Miura and M. Shirai, “Theoretical Study on Tunneling Magnetoresistance of Magnetic Tunnel Junctions with D022-MnZ (Z=Ga,Ge)”, IEEE Trans. Magn., Vol. 50, No. 1, pp. 1400504/1-4, 2014 (DOI: 10.1109/TMAG.2013.2276625)]に発表した。また、後半に得られた、Mn3-xZxGaの結果については、物理学会の春の年次大会においてポスター講演を行った。計画通り研究成果発表ができているため、おおむね順調に進展していると判断している。
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