1.Fe表面の磁気ダンピングの電界効果の第一原理計算を行い、Fe表面の磁気ダンピングの電界効果は、正電界(表面に電子が蓄積する方向の電界)に対して、増加することが明らかになった。これは、Fe表面の結晶磁気異方性の電界効果とは逆向きである。このとき、Fe表面の磁気ダンピングの電界効果は、1V/nmの電界に対して、7%程度の磁気ダンピングので変調が得られた。 2.Fe表面の磁気ダンピングへは主にスピントルク演算子のスピン保存項が寄与しており、電界効果に対しても、スピン保存項の寄与が大きい。また、スピントルク演算子のスピン保存項の中で、角運動量演算子の行列要素のうち、フェルミ準位近傍のdyz(dzx)軌道とdxy軌道の行列要素が最も大きな寄与をしていることがわかった。 3.Fe表面のdxy軌道とdyz(dzx)軌道はともにフェルミ準位付近でエネルギーに対して局所状態密度が増大していることから、この電子構造が磁気ダンピングの電界効果に起因していると考えられる。一方、結晶磁気異方性に対しては、角運動量演算子のFeのdxy軌道とdyz(dzx)軌道に対する行列要素は面内結晶磁気異方性に寄与することから、この軌道角運動量演算子の寄与の違いが、磁気異方性と磁気ダンピングではみられることを見出した。 4.L10型-MnGaを強磁性電極に用いたMnGa/MgO/MnGa(001)の磁気トンネル接合における磁気トンネル抵抗比の第一原理計算を行い、歪の大きなMnGaに対してはΔ1バンドに関するハーフメタル制により、巨大なTMR効果が得られることを明らかにした。また、Mn終端面とGa終端面のTMR比の終端面依存性を解析し、どちらの終端面にかかわらず大きなTMR比が得られることを明らかにした。
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