本研究では、光酸化法を活用して、金属酸化物半導体のプレーナー型PN接合を金属の酸化により形成する。昨年度までの研究により金属亜鉛を400℃で紫外線酸化して得られた酸化亜鉛は、ホール測定でn形伝導を示したが、酸化ニッケルはホール測定ではp形を確認できなかった。そこで、NiOの欠陥を減少させ、P形伝導を明確にするためにLiのドーピングを行った。Liは反応性が高いため、真空蒸着は難しいとされているが、イタリアの企業でLi蒸着源として開発された原料を含むボートを購入し、真空蒸着を行い、500℃1分でLi拡散を行った。Liの拡散はサファイア基板上、SOI基板上およびn-Si基板上のNiOに対し行った。蒸着後LiはXPSよりLi2OやLi2CO3として存在していることが確認できた。拡散後,可視光付近での透過率の減少およびラマン分光測定におけるNiO1Pピークの半値幅のわずかな減少から結晶性の改善が考えられた。n型Si上に作製した場合、このpn接合におけるI-V特性はLi拡散をしないものと比較して電流値が低いことから作製したNiO膜に対し今回用いた拡散の条件ではNi空孔へLiが拡散することで伝導に寄与する点欠陥が減少したと考えられる。さらに、Liの拡散条件を最適化すれば、ZnO上にキャリア濃度を制御したNiOが作成され、pn接合の実現も期待される。また、Zn上に堆積したNiからなる積層構造を400℃で同時酸化したところリーク電流が大きいものの整流性を示すPN接合が得られたことは、本研究で目指す金属の光酸化による酸化物半導体デバイスの作製が可能であることを示した。
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