研究課題/領域番号 |
25420287
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
若家 冨士男 大阪大学, 極限量子科学研究センター, 准教授 (60240454)
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研究分担者 |
阿保 智 大阪大学, 極限量子科学研究センター, 助教 (60379310)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グラフェン / レーザー加工 |
研究概要 |
グラフェンを大気中でマスクレスでレーザー加工する手法を開発すること,および,その際にグラフェンの層数を選択できる手法を確立することを目的として研究を推進した。本年度の実績を以下に示す。(1) SiO2/Si 基板上にスコッチテープ法を用いて作成したグラフェン試料の AFM/MFM観察,ラマン分光を行い,層数(膜厚)を確定したグラフェンを準備した。 (2) 様々なパワー密度の紫外線レーザーを照射し,照射前後のグラフェンを顕微鏡やAFM/MFM,ラマン分光により観察し,レーザー加工が起こるためのレーザーパワー密度を明らかにした。例えば,100 nm 厚のSiO2上の 5 nm 厚のグラフェンでは,約 3 MW/cm2 以上のパワー密度で加工が起こった。また,薄いグラフェンを加工するためには,より大きなパワーが必要であることを明らかにした。 (3) レーザー加工が起こる閾値パワー密度は,基板とグラフェンとの吸着ポテンシャルの強さに関係していると考え,吸着ポテンシャルの大きさをレーザー照射実験によって計測できる可能性を指摘した。実際に,基板の前処理の方法が異なる複数の基板を用いて実験を試みたが,基板前処理による閾値レーザーパワー密度の差はほとんど見られなかった。今回試みた前処理の違いは,吸着ポテンシャルの大きさにほとんど影響を与えなかったと考えられる。 (4) 空気/グラフェン/SiO2/Si の各層のレーザー吸収,温度上昇,熱拡散(熱伝導),熱膨張を考慮して,レーザー照射による各層の温度を計算するためのプログラムを作成した。さらに,グラフェンのレーザー加工の原理を明らかにするため,グラフェン-基板間のポテンシャルの関数形を仮定し,レーザー照射中の過渡現象を追跡できるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な膜圧(層数)のグラフェンを用いてレーザー照射実験を行い,加工が起こるための閾値レーザーパワー密度の膜圧依存性を明らかにできた。これは,層数選択的プロセスが可能であることを実験的に示すものである。しかし,その加工の原理が不確定であり,今後は原理の追求が必要である。原理が明らかになれば,他の基板への適用にも道がひらけることになる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の実績として,SiO2/Si 基板上のグラフェンをレーザー加工するための閾値レーザーパワー密度がグラフェンの膜圧(層数)の関数として明らかとなった。ただし,その加工原理が不確定であり,SiO2 の膜圧を変えた場合や,他の基板を用いた場合に,この加工法が有用であるかどうかを検討しなければならない。今後は,種類の違う基板を用いた実験や,真空中での実験,基板を加熱しながらの実験などを行い,原理の追求と,適用範囲の拡大を目指す。また,ラマン分光では検出できないグラフェンのレーザー照射欠陥については,低温での電気伝導評価を行い,加工損傷についても明らかにする予定である。
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