研究課題/領域番号 |
25420289
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山田 陽一 山口大学, 理工学研究科, 教授 (00251033)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 励起子 / 励起子分子 / 局在化 / 低次元化 / 窒化物半導体 / 混晶半導体 / 励起子工学 / 量子井戸 |
研究実績の概要 |
AlGaN混晶量子井戸構造における高密度励起子系の基礎物性の解明に取り組んだ。前年度の研究により、Al0.60Ga0.40N量子井戸活性層の膜厚が2 nmの試料における励起子分子の結合エネルギーが136 meVに達し、励起子分子は室温においても極めて安定に存在することを明らかにした。そこで、室温以上の高温領域におけるPLおよび PLE測定を行うことにより、励起子分子の熱的安定性と高密度励起子系の挙動に関する考察を行った。まず、室温300Kから750Kまでの高温領域におけるPL測定を行った。その結果、励起子分子の発光線Mは750Kの高温においても明瞭に観測され、励起子分子が750Kにおいて安定に存在していることを明らかにした。また、室温からの温度上昇に伴い、500Kにおいては励起子分子発光線Mよりも低エネルギー側の発光線PXMの相対強度が増加し、700Kにおいてはさらに低エネルギー側の発光線PMの相対強度が増加する様子が観測された。そこで、室温以上の高温領域において顕在化する発光線の起源を明らかにするために、高温領域におけるPLE測定を行った。その結果、発光線PXMとPMのPLEスペクトルには、励起子分子の発光線Mと同様に、励起子共鳴に加えて励起子分子の2光子共鳴が観測された。この観測結果は、発光線PXMとPMの起源に励起子分子が関与していることを示している。発光線のエネルギー位置を考慮すると、発光線PXMは励起子と励起子分子との間の非弾性散乱、発光線PMは2つの励起子分子間の非弾性散乱によるものであると説明した。 次に、励起子分子に対する量子閉じ込め効果の詳細を明らかにするために、励起子分子結合エネルギーの井戸幅依存性の解明に取り組んだ。現在までに、上述した井戸幅2nmに加えて、井戸幅が1.5nmの試料の励起子分子結合エネルギーが146meVに達することを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的として、AlGaN系混晶量子井戸構造における低次元系励起子分子の基礎物性の解明を掲げている。昨年度までの研究成果を踏まえて、本年度は室温よりも高温領域における励起子分子の熱的安定性と高密度励起子系の挙動を解明することを目指した。実際に、励起子分子が高温750Kにおいても安定に存在することを明らかにした。また、温度上昇に伴い、励起子と励起子分子間の非弾性散乱や2つの励起子分子間の非弾性散乱による発光線が顕在化することを明らかにした。さらに、励起子分子に対する量子閉じ込め効果の詳細を明らかにするために、励起子分子結合エネルギーの井戸幅依存性の解明に取り組み、井戸幅を2nmから1.5nmにすると、励起子分子の結合エネルギーが136meVから146meVに増大することを明らかにした。以上の研究成果より、本年度の初めに立案した研究実施計画はほぼ達成されたものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25、26年度の基礎物性評価の結果を受けて、平成27年度はAlxGa1-xN混晶量子井戸内に形成される低次元系の局在励起子分子の光機能性を評価する。特に、励起子分子の輻射再結合過程や、励起子-励起子分子間または2つの励起子分子間の非弾性散乱による輻射再結合過程による光学利得生成に着目し、「励起子分子レーザ」の実現に向けての構造最適化の構築を目指す。具体的には、時間分解非線形発光分光法により、高密度励起子系からの発光の非線形成分とその時間応答を測定し、その光学的非線形性の起源を解析する。また、光励起下における誘導放出、レーザ発振を測定し、光学利得生成に与える低次元化および局在化の効果を系統的に解析する。
|