研究課題
平成27年度では,まず,ピン物質BaSnO3とYBa2Cu3Oyからなる擬似多層膜(YBa2Cu3Oy:完全な層,BaSnO3:擬似層‐孤立したナノアイランド状に堆積)について,基板温度,層数によりBaSnO3ナノ粒子のサイズや空間分布の制御を試み,Jcの磁場角度依存性に与える影響について調べた.高い基板温度では,B||cにおいて顕著なJcの向上がみられたことより,大きなナノ粒子ほどピン止めに寄与することを確認した.また,少ない層数(一層あたりのBaSnO3ナノ粒子は増)では,B||cのJcはドープ無しの純YBa2CuOy薄膜より低いが,ab面方向で顕著に高いJcのピークが生じたことより,面内で多数分布したBaSnO3が,B||abにおいて有効な面状のピンとして作用することを確認した.次に,これらのBaSnO3/YBa2C3Oy擬似多層膜において,重イオン照射により柱状の照射欠陥を導入することで,1次元ピンと3次元ピンからなるハイブリッド磁束ピンニングを実現し,ナノ粒子のサイズ,空間分布が与える影響について調べた.ナノ粒子のピン止め効果は,磁束線の本数が多くなる高磁場,および柱状欠陥の影響が弱くなるc軸から傾いた磁場方向において顕著になり,ナノ粒子導入の照射試料の方が高いJc値を示した.このナノ粒子の正の効果は,基板温度の高い試料ほど顕著であることが確認された.B||abでのJcについては,ほとんどの試料で照射欠陥導入により減少の傾向を示したが,少ない層数(一層あたりのBaSnO3ナノ粒子は増)をもつ照射試料では,B||abでの顕著なJcのピークを維持しながら,照射によるB||cでのJcの向上も確認できた.以上の結果より,ハイブリッド磁束ピンニングのコンポーネントの一つであるナノ粒子のサイズ,空間分布制御により,ハイブリッド磁束ピンニングを高機能化できる可能性を示した.
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