研究概要 |
磁気力顕微鏡(MFM)の性能を決定する磁性探針において、高分解能、高感度、高反転磁界特性を実現するための基本構造、および磁性探針活用による微細磁区構造解析技術の検討を行った。 (基本構造検討)被覆磁性材料として、高飽和磁束密度を持つCo, Co-Fe合金, Fe、高い磁気異方性を実現できるCo-Cr-Pt合金, L10-FePd, L10-CoPt, L11-CoPt, 低基板温膜形成が可能な多層磁性膜材料のCo/Pd, Co/Pt, Co/Niを検討した。Si探針上に磁性膜厚10-200 nmの範囲で変化させて被膜形成して磁性探針を作製し、分解能と反転磁界強度を測定した。この結果、(a) 磁性探針の磁化検出感度と分解能は膜厚に対してトレードオフの関係にあり、最適被覆膜厚は約10 nmであること、(b) Co, Co-Fe合金被覆探針で7 nmの分解能を達成できた。(c) 200 nm厚のL10-FePd被覆探針で5 kOeの反転磁界を得た。(d) また7 - 8 nm程度の高分解能特性を保って高い反転磁界を実現するためには厚さ30-40 nmのL11-CoPt合金およびCo/Pt多層膜被覆が有効で、1-2 kOeの反転磁界が得られた。(微細磁区構造解析技術検討)高分解能磁性探針(分解能7 nm)を用いて磁気記録媒体の微細塾構造解析を行った。CoCrPt-SiO2グラニュラー構造を持つ垂直磁気記録媒体の粒子分離構造の透過電子顕微鏡(TEM)像と同一試料の高分解能MFM像を比較検討することにより、媒体微細構造と磁区構造の相関解析を行う新技術を開発した。これは高分解能観察が可能なMFM探針開発により初めて可能になったものであり、今後の磁性デバイス開発での活用が期待される。
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