研究実績の概要 |
磁気力顕微鏡で使用する磁性探針の高分解能化と高反転磁界化を実現するための条件検討を継続するとともに、探針の耐食性向上の予備検討に着手した。平成26年度に実施した研究結果を踏まえ、高分解能化には高飽和磁束密度を持つ磁性材料(Co, Fe)を、高反転磁界化には高磁気異方性を持つ磁性材料(L11-CoPt, Co/Pd多層膜)を中心に非磁性Si探針への被覆条件を変化させて、特性向上可能性を調べた。 この結果、(a)スパッタ製膜法とMBE法で形成した磁性探針では分解能特性に大きな違いがなく、CoもしくはFe被覆膜厚を最適化(10-20nm)にすることで6.5-6.8nmの優れた分解能が再現性良く得られること、(b) 高反転磁界を実現するためには比較的低い温度(300 C)で製膜可能なL11-CoPt材料が適しており、被覆膜厚10-80nmに対して反転磁界Hsw:1.5-2.8 kOe, 分解能<10 nmの特性が得られ、膜厚200 nmではHsw=6 kOe, 分解能15 nmの特性となること、(c) 室温製膜が可能なCo/Pd多層膜ではRu下地材料導入により、1kOe以上の高い反転磁界と9nmの良好な分解能が実現できることが明らかになった。さらに開発した磁性探針を磁気記録媒体に適用し、10 nm以下の高分解能で磁化状態解析ができることを示した。 当初平成27年度に予定していた磁性探針の耐食性向上策を先行検討し、Fe被覆して作製した磁性探針表面に極薄(2 nm)の炭素膜を被覆することにより、探針の保存寿命を数カ月以上に延ばせる可能性を見出した。 これらの結果は世界トップレベルの成果である。研究成果に関して国際会議において2件のプレナリー講演、1件の招待講演を行った。
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