研究実績の概要 |
磁気力顕微鏡の磁性探針を構成する磁性材料と形成条件を系統的に研究し、高分解能、高反転磁界を持つ探針作製技術を開発した。磁気記録媒体などの磁性デバイスの磁区構造をnmレベル分解能で観察することが可能となった。 既に6 nmレベルの高分解能、1 kOe以上の高反転磁界特性を実現するための探針作製条件を明らかにしている。平成27年度は、(a)これらの特性を併せ持つ磁性探針と(b)実用化条件(耐食性、耐摩耗性)を検討した。 (a) 高分解能だが反転磁界が小さい(<0.4 kOe)鉄(Fe)被覆探針と高磁気異方性材料のL11-CoPtのハイブリッド膜被覆探針構造により、分解能 (8~11 nm)と反転磁界(0.4~1.5 kOe)が制御可能であり、膜比選択により高反転磁界(>1 kOe)と高分解能(<10 nm)特性を合わせ持つ探針実現性を示した。(b)磁性探針の磁性材料は酸化し易く、またSiなどに比べ軟質であるため、耐食性と耐摩耗性が劣る。これらの問題に対処するため、硬質の極薄保護膜形成技術を検討した。厚さ2 nmの保護膜(C, Si-N, Si-C)を磁性探針表面に被覆することにより、未被覆探針に比べて耐食性が少なくとも5倍、耐摩耗性が3倍向上することが分かった。高分解能で高反転磁界特性を持つ実用性に優れた磁性探針作製の基本技術を確立した。 平成25年度~27年度の研究により、先端曲率3 nmのSi探針にFe被覆した探針で高分解能特性(<7 nm)を、200 nmのL11-CoPt磁性膜被覆した探針で高反転磁界特性(6 kOe)を、Fe/L11-CoPtハイブリッド被覆膜探針で高分解能(<10 nm)と高反転磁界特性(>1 kOe)が両立できることを示した。極薄の硬質保護膜被覆により耐食性と耐摩耗性を3倍以上改善可能で、磁性探針実用性を大幅に向上できることを明らかにした。
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