研究課題/領域番号 |
25420295
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岩田 展幸 日本大学, 理工学部, 准教授 (20328686)
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研究分担者 |
山本 寛 日本大学, 理工学部, 教授 (90130632)
橋本 拓也 日本大学, 文理学部, 教授 (20212136)
高瀬 浩一 日本大学, 理工学部, 教授 (10297781)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Cr2O3 / 電気磁気効果 / 交換バイアス磁場 / スパッタ法 / パルスレーザー堆積法 / 酸化物人工超格子 / 超高密度ターゲット / マルチフェロイック |
研究実績の概要 |
[Pt/Co]3/Pt/Cr2O3//Al2O3(1-102)(r面)積層膜の強磁性成分[Pt/Co]交互積層膜のキュリー温度は約200Kであった。飽和磁化の大きさからCo膜厚は約0.5nmであった。表面形状と合わせて考察すると、2次元的に平坦で、厚み数nm以下の[Pt/Co]交互積層膜が成長し、Co膜厚が薄い事が原因でキュリー温度が室温以下と考えることができる。c面配向膜はカー効果の結果より数十Oeの交換バイアス磁場を確認した。LiNbO3(1-102)基板のアニール条件は非常に困難で、Liの高い蒸気圧が原因でステップ形状が針状になりやすいことがわかった。Li-Cr酸化物の混晶と考えられる異相が界面近傍に成長した。一方、斜方晶系YAlO3(001)基板上に菱面体晶系Cr2O3がエピタキシャル成長していることがわかった。グレイン間に深さ数十nmの溝が発生していたが、逆格子空間の測定結果から、それぞれのグレインは面内方向の揃った単結晶であることがわかった。 [CaFeO3(CFO) / LaFeO3(LFO)]、[CFO / BiFeO3(BFO)]、[CFO / BiFe1-xMnxO3(BFMO)]、 [CaMnO3(CMO) / BFMO]人工超格子の磁化特性を測定した。[CFO/BFO]超格子はSrTiO3(STO(110))基板上に、その他超格子はSTO(001)基板上に成長させた超格子を用いた。すべての人工超格子の飽和磁化は室温に置いてバルクの数倍となった。キュリー温度は、それぞれ、520K、620K、450K、390Kといずれも室温以上であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強磁性/Cr2O3積層膜における強磁性層の成膜最適化、特に厚み制御が非常に難しく、基板ヒーター部の設計を見直す段階である。本研究の目的達成のためには、LiNbO3基板は不向きであることがわかった。一方で、交換バイアス磁場を積層膜にて確認し、結晶系の異なるYAlO3基板にCr2O3をエピタキシャル成長させることができた。この結果より下地電極層が作製可能であることが判明し、電界印加による磁化反転素子開発に向けて大きく進展した。ペロブスカイト系酸化物人工超格子は格子歪みを持ちながらエピタキシャル成長した。キュリー温度は室温以上で、室温における飽和磁化はバルク値の数倍であった。簡単な計算によって予想した範囲内であった。また、密度汎関数法を用いた第一原理計算では、[CFO/LFO]超格子はFeイオン一つあたり約0.22μBとなり、測定値の約2倍の範囲内で一致した。
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今後の研究の推進方策 |
サファイア基板上で[Pt/Co]/Cr2O3積層膜を作製し、電磁場冷却によって交換バイアス磁場が発現することを確認する。電場もしくは磁場反転により交換バイアス磁場の符号も反転することを確認する。YAlO3基板に下地電極Ca0.96Ce0.04MnO3を作製し、続けてr面配向Cr2O3薄膜を作製する。この時、Cr2O3にFeをドープし、ドープ量を変化させることで、格子整合度を1-2%以下に抑えながら溝の発生しないr面配向Cr2O3薄膜を成長させる。磁気測定およびカー効果を用いて交換バイアス磁場の挙動を観測する。また、電界印加時の磁気特性を、カー効果およびホール効果を利用して測定し、交換バイアス磁場が電界により制御できることを立証する。一方、ペロブスカイト系酸化物人工超格子においては、測定した超格子すべてにおいて、室温以上のキュリー温度を観測した。Cr2O3積層膜と同様に、電界印加時の磁気特性を、カー効果およびホール効果を利用して測定し、交換バイアス磁場の特性を観測する。また、SrTiO3(001)とは異なる面方位や格子定数の異なる基板、および超格子の積層ユニット数を変化させることで、誘起磁化の増大を試みる。実験に先駆け、最も大きな誘起磁化を発現させるたに、第一原理計算によって、人工超格子に最適な組み合わせ、超格子構造を予想する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費以外はほぼすべての資金を消耗品として使用している。研究を精力的に推進するために、酸化物単結晶基板、成膜用酸素ガス、エキシマレーザー用ガス、表面形状・物性測定用探針、真空部品に主に使用している。H26年度においては、それら薄膜作製・評価に用いる消耗品を購入し計画通りに研究が進んでおり、端数として残金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度も同様に薄膜作製・評価用の消耗品を順次購入するが、端数として残金が発生しないように、計画的に研究を推進する。
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