研究課題/領域番号 |
25420299
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
西永 慈郎 独立行政法人産業技術総合研究所, 太陽光発電研究センター, 研究員 (90454058)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フラーレン / GaAs / 光スイッチ / 量子ドット / 太陽電池 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、有機・無機半導体ヘテロ界面の結晶成長と新規物性探索、および、そのデバイス応用の提案である。構造対称性に優れ、炭素のみで形成されたフラーレンC60分子と、III-V族化合物半導体であるGaAs結晶は、イオン半径が大きく異なるにも関わらず、GaAs結晶成長中にC60分子を添加することで、GaAs結晶母体に欠陥を発生させることなく、C60分子が添加される。C60分子の分子軌道はGaAs結晶格子中であっても活性であることが確認されており、C60/GaAsヘテロ界面は、有機・無機半導体ヘテロ界面の新規物性を評価するのに、優れたシステムであると考えている。 昨年度までの研究によって、AlGaAs/GaAsヘテロ界面に形成される2次元電子を、C60分子による電子トラップによって変調できることが明らかとなった。C60添加量およびAlGaAs/GaAsヘテロ界面からの距離によって、電気的特性を変化させ、赤外光の照射によって、2次元電子ガスの発生および消失させることに成功した。本年度はより基礎的なGaAs pin接合を作製し、そのi層にC60分子を添加することで、どのようなpn接合が形成されるか、CV測定および光電流スペクトルを計測することで評価を行った。 MBE法により、GaAs pin 接合を作製し、i層のみにC60を添加した。CV測定により空乏層がi層とn層の間に形成されることがわかった。これはC60電子トラップが負の空間電荷として機能し、正の空間電荷(ドナーイオン)と共に、空乏層を形成することを示す。この空乏層は一般的なpn接合と異なり、正孔を生成しないC60分子(深いアクセプタ)によって形成されている。今後、CV測定の周波数特性、および太陽電池特性によって、C60電子トラップの基礎的特性解明を図り、高密度メモリとしての応用を図る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極低温における光物性および電気的特性の評価が完了した。最終年度である来年度は室温におけるC60量子ドットの特性、特にキャパシタンス特性、および発光寿命を評価し、デバイス構造の提案を行う。
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今後の研究の推進方策 |
発光スペクトルと発光寿命について解析を行い、C60量子ドットの基礎的特性を評価する。この研究は産総研の研究設備にて可能である。また、筑波大学岡田晋教授との共同研究として、ナノカーボン・無機半導体ヘテロ界面に関する理論計算を行い、実験結果との比較検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
液体窒素代として計上していた消耗品が、使用せずとも成果を上げることができ、次年度の消耗品代として繰り越すため。
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次年度使用額の使用計画 |
液体窒素を購入するために、消耗品代として繰り越す。
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