研究課題/領域番号 |
25420300
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
中野 由崇 中部大学, 工学部, 教授 (60394722)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | AlGaN/GaNヘテロ構造 / 電流コラプス / 欠陥準位 / スイッチング特性 / 有機金属気相成長 / 炭素 / GaNバッファ層 / ショットキーダイオード |
研究実績の概要 |
AlGaN/GaNヘテロ界面の2次元電子ガスを積極的に利用した高移動度トランジスタは省エネルギー型の高周波パワーデバイスとして期待されているが、結晶中に存在する欠陥準位の存在によりスイッチング特性が不安定となる電流コラプス現象が深刻な問題となっている。研究開発当初はAlGaNバリア層への表面保護膜の形成やフィールドプレート型ゲート電極構造による電界緩和により電流コラプス現象は7割程度抑制されてきたが、バルク結晶内の欠陥準位に起因する電流コラプス現象が残存しており、未だ完全排除には至っていない。本研究ではバルク結晶に起因する電流コラプス現象の原因解明を最終目標としている。平成25年度は、有機金属気相成長(MOCVD)法による成長温度をパラメーターとして、GaNバッファ層に存在する炭素関連の欠陥準位とターンオン時のスイッチング特性の相関関係をショットキーダイオードを作製して詳細に検討した。平成26年度は、実用的な観点から更に踏み込んで、この両者の相関関係をウエハレベルで評価可能かどうか検討した。 ウエハ面内の部位による違いを明らかにするため、非侵襲測定が可能な水銀プローブ電極を用いて、ウエハ内の任意の位置で、光容量過渡分光法による欠陥準位の高感度評価とC-t法によるターンオン・スイッチング特性の短時間評価を可能とした。更に、複数ある炭素関連欠陥準位の光吸収エネルギーに対応する光照射を組み合わしてターンオン時の容量回復特性を評価することで、スイッチング特性に対するそれぞれの欠陥準位の影響を短時間で明確に分離できるようにした。その結果、残留炭素濃度に大きく依存するが、伝導帯下2.75eVと3.23eVに存在する炭素関連欠陥準位がスイッチング特性を支配することが分かった。また、この手法を用いると、AlGaNバリア層表面のスイッチング特性に及ぼす影響も簡便に評価できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験による検討は連携研究者の協力により当初の計画通り順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験検討で、サファイア基板上にMOCVD結晶成長した一般的なAlGaN/GaNヘテロ構造ではGaNバッファ層に存在する炭素関連の欠陥準位がスイッチング特性を支配していることが明らかになった。平成27年度は、実用上の観点からSi基板上に作製したAlGaN/GaNヘテロ構造ウエハを購入し、欠陥準位とスイッチング特性の相関を評価し、サファイア基板上のAlGaN/GaNヘテロ構造の結果と比較検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を海外で開催される国際会議で発表する予定であったが、海外出張を次年度に延期したため予算の一部を繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はSi基板上にMOCVD成長したAlGaN/GaNヘテロ構造ウエハを購入し、バルク結晶における欠陥準位とスイッチング特性の相関を検討する予定である。また、最終年度であるため、研究成果を纏めて海外の国際会議で発表するための海外出張も計画している。
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