風力発電システムに落雷が生じた場合,運転停止や部品交換などの問題が発生する。日本海側に設置された風力発電システムに冬季雷が落ちた場合,そのエネルギーが大きいことからブレードを破損する事故につながる可能性がある。一方,これらを防ぐ一つの手法として避雷針などの設置が行われているが,その避雷効果もブレード直撃雷に対し完全ではない。 本研究では,落雷によるブレードの破損メカニズムの解明および落雷被害の防止・改善法を検討し,有効な落雷対策と考えられる落雷時の雷放電の進展制御を試みた。 ブレード表面に付着する可能性のある異物が,ブレード表面の沿面放電の進展特性に与える影響について各種パラメータを用いて実験を行った。ブレードに設けた段差に,自然環境における異物として,黄砂の主成分である二酸化ケイ素と塩水を付着させた場合の検討を行った。 その結果,ブレード表面の段差によって沿面放電の進展が促進されるが,段差を埋める異物が付着すると放電を妨げる要因となることがわかった。特に,黄砂の主成分である二酸化ケイ素が風車ブレード表面に付着すると段差を埋めるため,雷の進展を阻害する一方,塩水が付着すると段差を通じて流れるため,雷を導きやすくする結果が得られた。 今後,得られた知見を現在実施しているフィールド試験においてフィードバックすることで,雷を高確率でレセプターに導き落雷被害を最小限に抑える効果の検証を行う。
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