研究課題/領域番号 |
25420308
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
島村 清史 独立行政法人物質・材料研究機構, 光・電子材料ユニット, グループリーダー (90271965)
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研究分担者 |
ビジョラ ガルシア 独立行政法人物質・材料研究機構, 光・電子材料ユニット, 主任研究員 (90421411)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高輝度白色LED/LD / 蛍光体 / 単結晶 / 量子効率 |
研究実績の概要 |
高輝度化に適した樹脂フリーの白色LED/LDを実現するため、YAG(Y3Al5O12)系単結晶蛍光体を提案している。初年度はCe:YAG単結晶に着目したが、今年度はCe:(Y1-xLux)3Al5O12(YLuAG)に着目し、当該目的に関する検証を行った。実用性を考えた場合、色の制御が重要であり、YのLuによる置換効果を検討した。 (1)Ce:YLuAG単結晶の育成: Czochralski法を用い、Lu濃度が異なる直径約2cm、長さ約12cmの単結晶を育成した。Lu濃度を測定し、Lu濃度と格子定数の関係を調べた。YLuAGにおいてYとLuは全率固溶し、その格子定数はVegard則により直線的に変化することが分かった。 (2)発光スペクトルの変化:Lu濃度の変化による格子定数が直線的に変化することに対応し、発光のピーク波長も直線的に530nmから500nmへ、緑色シフトすることがわかった。 (3)優れた温度特性の実証:量子効率とその温度依存性を測定した。測定には育成したCe:LuAG単結晶と、比較用蛍光体として、現在最も優れるとされるセラミックス粉末Ce:LuAG蛍光体を用いた。粉末蛍光体の場合、室温での量子効率がCe:YAGよりも低く、かつ200℃程度を超える温度では著しく低下し、300℃においては約15%の低下を示した。それに対しCe:LuAG単結晶蛍光体は、室温でCe:YAG単結晶と同等であるのみでなく、300℃まで全く温度依存性を示さなかった。 (4)演色性の向上: Ce:YLuAG単結晶の発光スペクトルを用い、白色化のシミュレーションを行った。励起光源にはLEDとLDの両方を用いた。双方において、赤色蛍光体を追加することでRaが95を超えることが可能であることが分かった。Ce:YLuAGは発光ピークを緑側に持つため、赤色の追加で綺麗なRGB白色が達成できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
最も大きな理由は、前年度のCe:YAGに引き続き、Ce:LuAGにおいても、製作した蛍光体単結晶が、現在最も優れるとされるセラミックス粉末蛍光体よりも高い量子効率を示したのみでなく、室温から300℃までの測定範囲内において、量子効率が全く低下せず、温度依存性を示さなかったことである。更に驚くべきは、Ce:LuAG単結晶とCe:YAG単結晶の特性に差異が無かったことである。これは、完全に、従来の蛍光体の常識を覆すものである。蛍光体において演色性の向上は重要な課題であり、これまでCe:LuAG粉末蛍光体も研究が進められてきたが、従来品の量子効率は室温でCe:YAGよりも悪く、温度特性も更に悪かった。粉末蛍光体の分野においては、この量子効率の温度依存性、温度上昇による著しい量子効率の低下が大問題となってきていた。特に高輝度化が本格的に要求される昨今の白色LEDにおいては高輝度化によるデバイスの温度上昇は避けられず、この問題が更に大きくなってきていた。ところがこの問題の解決の糸口が見つからず、ほぼ解決不可能な問題との認識がされつつあった。そのため本研究で開発した材料、示された特性は、文字通り蛍光体分野におけるブレークスルーの達成といえるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
Ce:YAG単結晶、Ce:YLuAG単結晶、Ce:LuAG単結晶、いずれも従来の常識を覆す特性を示した。今後は更なる発光効率の改善をめざし、どこまで改善が可能かを見極める必要がある。Ce濃度をあまり上げすぎれば単結晶が得られなくなるので、Ce濃度と発光効率の改善点などを見極めることが必要である。更に演色性を向上した材料の発光特性の温度依存性、入力パワーと温度上昇や効率の依存性なども調べる必要がある。同時に、量産化、低コスト化を見据えた単結晶の大型化も必要であり、パッケージングに適した材料製作のための加工技術開発も必要であろう。今後はこれらに関する検討も進めていく。
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