研究実績の概要 |
有機薄膜材料は軽量かつ耐衝撃性に優れ、低温成膜できるため従来と比較して低コストでの半導体素子が生産可能となる。有機薄膜トランジスタ(OTFT)はアモルファスシリコントランジスタに匹敵する移動度を持つことが報告されており、電子ペーパーやディスプレイ素子、ICタグなどのデバイスへ応用が期待される。本研究では、ペンタセンをチャネル層として用い、絶縁層に電荷捕獲層を設けた有機半導体メモリの作製を試みた。ゲート電極としては、硼素ドープのp型半導体を使用し、その上に酸化膜と電荷捕獲層(CYTOP)を積層し、そのうえに チャネル層としてペンタセンを真空蒸着により成膜した。最後にソース・ドレインとして金電極を形成した。このようにしてpタイプOTFTメモリを作製した。情報の書き込みはゲートに負バイアスのストレスを印加することで行い、しきい値電圧を測定したところ、ストレス印加前と比較して最大1.4V程度の変化がみられた。このことは、人間の脳の記憶保持機能に対応する。デバイスのオンオフ比は、5,000程度であった。また正のバイアスを印加することで、初期値に戻すことができる(リセット機能)ことを確認した。現在、さらに進めてnタイプのOTFTメモリの作製を試みている。このようにOTFTメモリをアレイ上に配列することで有機半導体デバイスのみで人間の脳における演算処理(ニューラル機能)を再現することが可能となる。またOTFTのゲート部面積を拡張し、表面にタンパク質結合による電位変化をモニターできることも確認されており、バイオセンサー機能とメモリと一体化した知能化センシングも可能となることが明らかとなった。
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